君ヲ慕ウ 4
つらつらと考えているうちに眠っていたらしい。 日はとっくに中空から傾き始め、暑さの中にも乾いた風が季節の移り変わりを教えている。 熱は少し落ち着いたのか朝のような倦怠感はない。 水差しの水がすっかり生ぬるくなっていてハクタクを呼ぼうか迷っていると声がかかる。 「お目覚めですか時生様。一燈様がおみえでございますが、いかがなさいましょう」 一燈の名前に胸が痛むが時生はそれを完璧に隠し通す。 「具合が悪いからと断ってくれ」 今更どんな顔をすれば良いのか。それになんの用があるというのか。 口止めか? それなら誰にも言うつもりはないのに。 とりあえず、今は会いたくない。理由をつけて断るようにハクタクに指示しようとすると傍らに一燈が立っていた。 「よぉ! 身体どうよ?」 人払いをした一燈が意味深な言葉を紡ぐ。 「一燈さんっ!」 その台詞に昨夜の彼を思い出す。 同じ熱に浮かされ、熱い吐息で名を呼ばれ優しく時には激しく穿つ彼は別人のようで。 思い出して時生の顔が赤くなる。 「具合悪いって聞いたけど?」 そっちだろ?と無理矢理身体を押さえられ、昨夜繋がった箇所を検められる。 指が解すように動かされ、受け入れるべきではない秘処を探られて……。 「ぁっ」 途端に生み出される熱に時生は小さな声を上げた。 「まぁあんまひどくはないな」 もしかして今ので感じたかと聞いてくる一燈から時生は身を隠して頭を振る。 「ひどいですよ、こんな…」 思い出させるような事を平気でしてくるなんて信じられなかった。折角忘れようと思っていたのにと時生は唇を噛む。 移された熱は残り火を炎にしていくようで、抑えようにも一度覚えた感覚は容赦なく時生を襲ってくる。 夜着代わりの浴衣すら時生の敏感な肌を刺激した。 「どうした?」 「何も、ありませんっ」 「そうは見えないけどな。顔は赤いし目は潤んでる。もしかして誘ってんのか?」 誘っていないつもりでも、物欲しげなのがばれたのか……。 俯く時生に一燈が迫る。 「俺と火遊びなんざ100年早いっつーの」 のびてきた手から逃げようとすると浴衣の奥襟を捕まれ腕が袖から抜ける。 布団に押さえつけられ背中にキスを落とされ、柔らかい髪が羽根のように揺れた。 視界には自分の身体を支える一燈の手があり、俯せた時生の中心は変化を見せる。 「一燈さんっ」 「嫌じゃないなら黙っていろ」 嫌じゃないから困るんだ。そう叫べず黙る。 意外にも優しい手で愛撫され隅々までのキスに我慢出来なくなり、最後には一燈の行為を受け入れる。 男らしい手が時生を自由にし翻弄する。 期待してしまう。もしかして、望みがあるのかもしれないと。 こうして抱かれていると、何故か安心した。 (きっと僕は愛されているんだ) それが一瞬の錯覚だったなんて時生は思いもしなかったのである。 |