君と僕の温度差 2




「あー二日酔い〜」
 ギリギリの時間になって起きだしたココはぼさぼさの髪を手櫛で直してコップに注いだ水を飲み干している。
「人間界に馴染みすぎだ」
 同僚との付き合いなんて必要ない、お前はプリキュアのサポートのために教職を選んだはずたろう? そう言外に含ませればココは相好を崩してみせる。
「もう飲まないって。昨夜はたまたま主任が酌をしてくれたんで断り切れなくってさー」
 ココの言い訳に、その考えと行動が馴染みすぎだと言ってやりたかったがこれ以上は無駄だと話を逸らす。
「……昨夜は、……」
 すまなかった。と、いうべきか考えあぐねているとココが申し訳なさそうに手を合わしてみせた。
「何? 昨夜、って何かしでかしてた? いやー覚えてないんだよなー、まさか暴れたとか?」
 必死に謝るココに昨夜の事を覚えていないのだと知ってオレは胸を撫で下ろしていた。
 覚えていないぐらいなのだからココにとっては大した事ではないのだろう。
 拍子抜けだったが、知られていない方がいい。
 ココの身体を無理矢理奪っただなんて、自分もかなり人間界に毒されているらしい。
 痛め付ければ元に戻る、そのための行為と大義名分をかかげても、実際は親友を押し倒した事実に変わりはない。
 だが、ココを見ていると身体がおかしくなるのだ。
 それに心までが引きずられるようで、この身体は本当に面倒なように出来ているのだと認識を改める。
 自分たちにとって生殖機能なんて不要だろうに。
 これは子孫を残そうとする本能なのだろうが、パルミエでいた時の概念とはまったく別物で、慣れるなんて無理に等しい感覚だ。
 だが、この感覚もパルミエへと戻れば消えるだろうから、一刻も早く王国を復興させなければならないという事だろう。
 差し詰め、なるべくココを見ないようにすれば良い。視界に入れば、自分が自分でない行動に支配されそうになる。
 なのに、アイツは毎朝目の前で身仕度を整え、人間としての行動を始めるではないか。
 この姿は疲れるけれど、やはりこの世界で生活するには必要な機能を備えているため、極力この姿でいる努力はしているのだという。
「慣れれば、多少の事では元に戻らないよ」
 特にアルコールを摂取すれば、どんなに衝撃を受けても戻らない、と。
「ほら、修学旅行とかもあるし、夜とかも人間でいられるようにするのが目標だよ」
 力説するココのバカさかげんに涙が出てきそうだった。
 なんだ、その薄っぺらい目標は。パルミエ王国を復活させるのが一番重要な目標だろう?
 一刻も早く元の世界に戻りたい。そうすれば、ココに対する衝動も納まるだろう。
 昨夜の酔い潰れたココ。いや小々田というべきか。
 何の準備も無しにねじ込むと白い身体が仰け反って、小さな悲鳴をあげる。呼吸を整え下半身の力を抜こうとするだけで、ココの抵抗はなかった。
 まるで、慣れ親しんだ行為のように受け入れたココ。

(あぁ、こいつは人間界でこうして生計を立てていたのかもしれない)

 世馴れしたココは、王国が滅亡してから小々田としてのスキルを着実に上げてきたのだろう。
 せめて激しい抵抗でもあれば、自分が悪いと思う事も出来ただろう。だが、すべてはこの世界に毒されているココの責任なのだ。
 そう思うと、諸々の原因は自分であったとしても罪の意識は緩和された。
 パルミエを滅亡へと追い込んだのは自分だったとしても、ココに対してこんな気分になるのはすべてココの責任だとすり替えて……。

(誰が悪いかなんて、嫌というほど自覚している)





すみません続きます。一連の話が頭の中で爆発状態なもので。肉体的にはナツココ。精神的にはココ→ナツかも。目標はナッツがココを幸せにする事とハッピーエンド。



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