別離の儀式 1
少年から青年へと少しずつ変化していく身体。 骨張っている訳でもなく無駄に筋肉がついている訳でもない。 まだ未完成だけども長く美しい脚。細い腰。まだ大人には程遠いけれども確実に成長しているその肩に。 光はそんな半身の身体を余すところなく愛撫し、内側からの熱を誘い出す。 「あ、ひか……る」 小さく名前を呼ばれ、光は口腔内でかわいがっていた『馨』を解放する。 「何? 馨。遠慮しなくていいのに」 「ちが、う。……もう」 逆に馨に押し倒され貪るような口づけを交わす。 妖艶な輝きを宿す瞳が光を見下ろす。口の端に浮かぶ笑みはまるで今にも泣きだしてしまいそうな曖昧さで。 馨が何をしようとしているか見ていると、ゆっくりと『光』の上へと腰を落とす。 「馨!?」 「ちょっと苦しいけど、こうすると好きなように出来てイイね」 挑戦するような眼差しは、愛を囁く者のそれではなかった。 挑発的な態度。 身体を重ねるのはいつだって甘く淑やかなものではなく、言うならば奪い合い。それは食うか食われるかの弱肉強食の世界を彷彿とさせた。 「先にイったら負けだから」 そう云い終わらないちに馨は『光』を締め付けて腰を動かし、光もまた負けじと馨を揺すり上げる。 初めて身体を繋げた時からもう二年。 しかし光にとってはまだ二年。 禁忌を犯してまでもやっと手に入れた双子の弟。愛すべき存在と一つになれる尊い行為。 耽溺しているとは思いたくないがそれでも確かに光は馨に溺れていた。もうこのまま溺れ続けて、明かりの届かない所にまで沈んでしまいたいほどに。 絶頂を向かえ互いの体液で汚れるのも気にせず荒い息を整えながらのキス。身体の内の残り火を追い掛けているようなそれ。 しかし、まだ熱を帯びた整わない呼気とともに馨は冷たく言い放つ。 「もう、いい加減にしない?」 こんな関係を解消しよう。そう宣言するような馨はまるで別人のようで、今まで自分と繋がっていた恋人だとは思えなかった。 「馨……?」 「もしかして、理解出来ない? あのね、僕はこんなセックスに飽きたの。初めは興味本位もあったけど慣れちゃうとね」 マンネリだし、相手が光だけってのもつまんないし。 言い忘れてて悪かったけど今夜で最後だから、充分楽しんだしもう良いよね? そう口にした馨。 疑問文ではあったが否定を許さない馨の言葉に虚しくなる。 お前はその程度の軽い気持ちで禁忌を犯したのかと。 いつの間に馨の心は離れていたのだろう それに気付けなかった僕が悪いのか。 呆然としたまま反応出来ずにいると、馨は気怠い身体を起こしてシャワーを浴びに消える。 そして馨はその夜から僕の隣には戻らなかった。 光を大人の男にしよう、カッコイイ光を書こうとしたものの敢え無く撃沈。単に馨にフラレたダメ男orz 一応続きます。 |