雨後の月4




 この間塔矢と会ったのはいつだったろう?
 三日前は自分が出掛けようとした時に帰ってきたから少し顔を見た。一週間前はその反対で。
 十日前は実家に泊まったという翌朝、というか昼前に顔色の悪い塔矢の顔を見た覚えもある。
 いくら忙しいと言っても、さすがにこれはおかしい。
 塔矢が行くところといえば実家しかないのだろうが、もし電話して居ないと言われたらどうしようかと思うと恐くて電話できなかった。
 第一、携帯は繋がるのだ。
 たとえ途中で仕事中だからと切られても。
 聞きたい。
 聞いても良い? 今どこだよって。
 塔矢、お前の部屋でお前を待つのはちょっと淋しい。お前の匂いのするベッドで眠ってもお前の暖かさは無いんだ。
 どうして、こんなにすれ違うんだ?
 棋院で会っても、普通に会話するのに。
 一緒に帰ろうと思ったら、いつのまにか居なくって。
 今日は帰ってくるかなって、夕飯の支度しても。
 一人じゃ食べきれないんだからな。
 でも。こんなのって俺らしくないよな。
 聞いてみようかな、なんで帰ってこないんだよって。じゃないと浮気するぞって言ったらあいつ速攻で帰ってくるよな? 『ふざけるなっ』なんて言ってさ。


 どうして? 勇気を振り絞ったときにお前は出ないんだよ。電源落としてんだよ。まだ手が震えてるじゃないか。
 せっかく聞けそうだったのに。
 どこにいるの?
 俺が嫌いになった?
 浮気してるの?


 本当は、どれも。
 聞きたくないのに……。

 塔矢……。
 お前の匂いのする部屋。

 もう、薄れてきたよ。お前の匂い……。







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