スキャンダラスな彼女(プロローグ)



 僕は長い間、進藤ヒカルを女装癖のある一風変わった少年だと思い込んでいた。
 彼女と関わるすべての事がその思い込みを否定できるものではなくとも、当初のイメージを払拭出来なかったのはまさしく己の不徳とするところだろう。
 進藤ヒカルが男にもてる事を知っても別世界の事だと思っていた。出来るだけ係わらないでおこうと決めていた。
 何故なら、ずっと父達を見ていたから解るのだが、プロ棋士にとってスキャンダルは禁忌だからだ。
 新聞沙汰になれば後援会などの柵もあるため、それがデマであろうとなかろうと関係修復には貴重な時間を費やさねばならない。
 だから進藤ヒカルを避けていたのに…。

 いつしか彼に恋心を抱くようになり、そして進藤ヒカルが女性だと知り喜んだのも束の間……。
 それまでの彼女の過去が気になった。彼女をとりまく数々の男達……。それを乗り越えられると思っていたのに。
 どうしても今一歩彼女を愛しきれないでいた。


 僕は彼を愛していた。彼女を愛せると思っていた。

 だがそれは間違いだった……。



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