LADY GO 6



 
 随分背も高くなってしまい、そのうえ男言葉を直すつもりすらうかがえないヒカルの姿を見ながら佐為はため息をついた。
 自分が消えたらこの少女はどうなるのか。
 決して興味本位ではなかったが、ヒカルの恋心が成就するのをなんとしてでもこの目で見たかった。
 物語の一番良い所を見損ねる。
 実はそんな気分だった……。



 五月のうららかなある日。佐為が消えた。
 こんな事になるなら、夏のためにと買ったワンピース姿を望むだけ見せてやれば良かった。学校帰り、あかりに付き合って行った渋谷で買ったワンピース。


『ほら、ヒカルあの色はとてもヒカルに似合いますよ』
『あぁん?』
 ショーウィンドーに飾られた、白いワッフル地にオレンジ色の花がデザインされたワンピースがヒカルの視界に入る。
 似合うのか? なんて考えるヒカルにあかりが試着を勧める。
「いいよ、あれ。絶対ヒカルに似合うって」
 促されて半信半疑のまま試着室に入る。
「お客さまは華奢ですし足も細くお綺麗なので、とても可憐に見えますわ。二の腕も細いですし。もう少し背が高くなれば完全にモデル体型ですわね」
 誉められて悪い気はしなくて、結局買ってしまったそれ。家に帰って、そんな女の子な服が急に恥ずかしくなって再度試着する事なくクローゼットにしまったら佐為の抗議にあった。
『折角ですから、もう一度着てみせてください』
「夏になったら着てやるって」
『それじゃあ、遅いんです! 私にはもう時間が残されていないのですから』
「最近本当に我侭だぞ? 夏なんてあっという間だから我慢しろ」
『ヒカル……』


 今ヒカルの手の中にそのワンピースがある。もしかして自分が、不純な思いで囲碁に集中したから、呆れた佐為が消えてしまったのかもしれない。
 塔矢アキラを振り向かせるための囲碁に佐為は……。
 因島も。棋院も。探せるところは全て探して。
 そして決心した。
 もう碁は打たない。
 塔矢アキラも諦める。

 自分の我侭で佐為が消えたのだ。佐為に詫びるためにも碁は打たない……。塔矢アキラも忘れてみせる。

 一粒の零れた涙がワンピースにしみ込んだ。







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