LADY GO 4




「あ〜あ」
 若獅子戦が終わって、皆で食事をしながら俺はため息をついた。そして自分の掌を見つめる。
 残念だけど一回戦で負けてしまった事が本当に悔しかった。
 原因は解っている。

 俺の力不足。

 俺がもっと女としての経験値があったなら、足になんか気を取られなくてすんだのに。
 塔矢が来るからと久しぶりにミニスカートはいたら、足元ばかりが気になって……。
『ヒカル、ヒカル! 足、足!』
 気が付くと膝が開きかけるのを、佐為が慌てて注意する。
 普段なら周りの言葉なんか耳に入ってこないのに、その時ばかりは違った。
『ひ、膝が閉じられない……』
 そんな苦しさと一緒に打ってたものだから、最後のところでミスがでた。 
 もしかして、俺って本当に女の子なの? 折角、若獅子戦に可愛い格好で行ったのに塔矢の奴、完全無視なんだぜ。

 家に帰ってから、
『母さん、俺本当に女の子?』
 なんて聞いたら台所でこっそり泣いて、エプロンで涙を拭ってたみたいだった。
 育て方間違えたって泣いてみたいだけど。違うよ、もっと俺を可愛く産んでくれたら良かったんだ。
 塔矢が振り向くくらいに超可愛く産んでほしかったなんては流石に言えなかったけど。

 でもなんていうかフェロモンっていうの全然足りないんじゃないかって思う昨今な訳で。
「あ〜あ……」
 桜野さんのようなフェロモンが欲しいなぁ。ダメならせめて奈瀬ぐらい。それでもダメならあかりぐらいで良いからさ。

 帰り際に、
「どうせ、塔矢の奴俺が何着てたって一緒なんだから、もうスカートなんてはかねーよ」
 と佐為に向って呟いたのを、どうやら和谷が聞いてたみたいだったがそんな事はどうでも良い。
 それよりも、やっぱり色仕掛けは無理そうだから、ちゃんと囲碁の勉強してプロになろうと俺は決意も新たにしたのだった。


 それからの何週間か、何故だろうか和谷が『塔矢のクソ野郎!』と激昂していたんだけど、俺はその原因が解らなくって頭を悩ませたりもした。
 結局はやっぱり塔矢が強いからだろうということで自分を納得させたんだけど。
 どうやらその原因について、心当たりのある佐為は楽しそうに微笑んでいた……。

 とりあえず、目指せプロ! 落とせ塔矢だ!






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