Sugar Baby Love 2




 トレミー内で刹那を見つけたロックオンは、いつものように声をかける。
 切り出しはあくまでもさり気無さを装うが声は若干上擦っていた。
「よお、次のミッションプラン見たか?」
「あぁ」
 刹那と二人のミッションが二つ続く。ガンダムを駆っての武力介入はまだ良いとして、問題は日本でのミッションなのだ。
 ほんの少しだけ王の息がかかるエージェントと、極秘にデータの受け渡しをするのだが、暗号化するのもリスクがあるという事でデジタルを介さない受け渡しを予定しているのだ。
「でさ、移動を考えるとお前さんのところに泊めてもらうと助かるんだけど」
 どうせ日本でのミッションなのだから効率的に考えて合理的な話だろう。
「泊まる…?」
 仲間としてなのだから、なんら違和感がないと思ったが刹那にとってはそうでもなかったらしい。
「やましい事は考えてない!」
 慌てフォローするが余計に警戒させたようだ。
「ほらエージェントとの接触は向こうさんからの指示待ちだし、出向こうにも向こうさんがかなり警戒もしてるらしいから、いつ会えるか判らないだろ?」
 待つのにこちらも遊んでいる訳にもいかない。迅速な対応が求められるので必ず待機していなければならない。
「わかった、好きにしろ」
 ロックオンの必死の説明に刹那も渋々了承する事になる。
 しかし、泊まるという理由は解るが、それでも絶対ではないはずだ。女の一人暮らしと知ってやってくるのは脈があるのだろうか?
 経験のない刹那には読み解ける問題ではない。だが、いつもと変わらない男を見て刹那は可能性がないと知る。
 やはり範疇外なのだ。
 好きにしろとは言ったが内心は平静ではなかった。





 一つ目のミッションが終わり、共にユニオンの経済特区にある刹那の隠れ家へと入る。
 ロックオンを伴って刹那は先に部屋の奥へと歩を進め、その後ろをついて歩きながらロックオンは小さな溜め息を吐いた。
 使っていない部屋も寝泊まりするには不便はなさそうだが、シンプルというより何もない部屋を見ながら普段以上に無口な刹那にロックオンは後悔する。
(やはりどこかホテルでもとった方が良かったのか)
 同僚と言っても世間一般の同僚とは違うのだから二人きりで泊まるのに支障はないはずである。
 だが、刹那のいつもより強張った表情を見てロックオンは判断を誤ったかと反省していたのだ。
(ヤバいな。警戒されてるのか?)
 警戒されるような事をするつもりも気持ちもない。
 しかし二人きりになるとロックオンは判断を誤ったかと思うのだった。


 スタートから約一時間。
 ただ待つだけの時間であり、はっきり言って居心地はよくない。刹那はいつもどおりにしているだけなので、ようはロックオン自身の気の持ちようだろうか。
 黒のタンクトップは部屋着なのか、黙々とトレーニングに勤しむ刹那を見ていると変に勘繰った自分が恥ずかしくなってくる。
 緊張しているんじゃないかと考えていたが撤回しようと思う。
 男を泊めるのに刹那は警戒しなさすぎだ。まるで空気のように無視されている。
 手持ち無沙汰なのでトレーニングをする刹那を見るが見事に胸がない。
 外見だけでは絶対に男と通るだろう。
 誤解されても仕方ない。性別を間違ったのも俺のせいじゃないはずだと、この期に及んでロックオンは言い訳がましかった。
 ちなみにチラリと見える脇からも膨らみの欠片すら見当たらないと失礼な事を考えるロックオンである。
 しかし、女を連想させるものはないというのに、その衣服の下には少女の身体が隠されているのだと思うとロックオンは落ち着いて座ってなどいられなくなってくる。
 気になるのは単に本能なのだ。より若い方が繁殖期間が長いから、若い刹那に惹かれるのだと納得しようとしても納得などは出来やしなかない。
(って、ヤバイって事だよな)
 このまま居て刹那に手を出さないかというといまいち自信はない。あのベビードール姿で目の前を歩かれたなら確実に狼に変身してしまうだろう。
「やっぱ帰るわ」
 その言葉はあっさりと了承されるかと思ったのだが、意外な事に刹那に引き止められる事になりロックオンは激しく動揺する事になるのであった。








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