君はPretty Woman 6





 ブリーフィングルームでスメラギが「解散」の一言を発してようやく散会となる。
 女の自分から見ても不思議なぐらいの大きさの胸。地球のような重力がないから肩は凝らないし、垂れる心配ないわよ〜なんてビールを片手のスメラギを刹那は思い出す。
 あれが垂れるのか? どんな風に? 想像の範疇から逸脱して刹那は頭を振った。
「相変わらず見てるんだな〜」
 話し掛けてきたロックオンを無視しようとしたが、好きな男から話しかけられて無視するのは難しい。
 それでも最近はロックオンの事は考えないようにしている。
 怒ってなんかいない。むしろ入浴中を覗かれた件についてはもうとっくに許している。
 好きな男が自分に興味を持ってくれているなら好都合だからだ。
 しかし、覗いたにも係わらず女と気付かないのは侮辱以外の何物でもない。
 それどころか先日はアレルヤと抱擁しているところまで見てしまったのだ。
 きっとロックオンは同性愛者で、自分の入浴を覗いたのも男と思っているからに違いない。
「あれはいい。人類の宝だな」
 しげしげとスメラギの胸を見ているロックオンの傍らで自分の胸を見下ろせばそのサイズの違いに泣きたくなった。
「ロックオンは年上が好きか?」
 いつもスメラギの肩を持つような発言の多いロックオンに気付かないはずはない。
 男が好きでないなら、やはりあんな年上の女っぽい方が好きなのかもしれない。そんな予想は見事に的中したのだ。
「まぁ年上の方が床上手だしな」
 やはり俺では無理なんだと思い、悲しくなって俯く。
 さらっと口にしたロックオンの、床上手の意味は解らなかったが、自分が範疇外だというのはだけは確実だった。
 8才も年下でロックオンを癒す柔らかい胸も身体もない。
 せめて魅力的な胸さえあればロックオンの目にも止まったかもしれないのに。
 これ以上ロックオンの側にいられなくて刹那は立ち上がる。
 一瞬視線が合わさったが何事もなかったように逸らした。
 そろそろ忘れるという努力をすべきなのかもしれない。



 一部始終を見ていたアレルヤはもどかしい二人に出したい口を閉じる。
「また逃げられたか……」
「ロックオン?」
「おまけに軽蔑の目で見られたよ」
 反抗期かな〜と肩を落とすロックオンにアレルヤの内に存在するハレルヤが『あんたは母親か!』と叫んでいた。
 勿論一切おくびにも出さないでアレルヤは黙ったままだ。
「最近刹那が気になるんだ。男ならあっちに魅力感じるよな」
 スメラギを見ているロックオンは大きなため息を吐いている。
「いや別に人それぞれかと思いますよ」
 もしかして、やっと気付いたのか?とアレルヤの胸も高鳴る。
 いくら刹那が子供っぽくて、今まで付き合った女性の好みや価値観と違ってもなんら恥じる事はない。男の下半身と頭が別々の生き物だなんて歴史も証明している事だ。それに刹那は可愛いしあと2年もすれば誰もがその魅力に気付くだろう。



「優しいなアレルヤ〜」
 刹那が気になるなんて爆弾にも近い発言を容認してもらったロックオンは泣き真似をしてみせた。
 だがアレルヤの続く言葉に三文芝居も早々に幕を下ろす。
「誰だって若くて手垢のついてない方がいいでしょう?」
 つまりアレルヤは処女である事を求めるのだろうか。何故かにこやかな彼の頬は赤い。
「刹那に手垢ついてようが関係ないだろ」
 男に処女も何もない。と言おうとしたらアレルヤの目が細められた。
「どうして?僕なら何も知らない身体の方がいいです」
 物腰は柔らかい彼だったが見た目がクールな分凄みがあるのでロックオンもそれ以上の事は口にしない。
 男に処女もなにもないのに、アレルヤは考え方がおかしいらしい。
 刹那が処女だって? 
 あぁ、いわゆるバックバージンってやつか? そりゃ大抵の男は一生バックバージンで墓場に行くだろう。いや俺が言いたいのは刹那のバックバージンを奪いたいとかそんなんじゃなくて。単に刹那が気になるってだけだ。
 弟のような刹那。その範囲以上に気になってしまうと打ち明けただけなのに。
 っていうか、バージンにこだわるなんて、そりゃ童貞のセリフだぜ。とは言わない。



 刹那といい、アレルヤといい、本当に反抗期の子供に悩まされてる母親ならぬ父親の気分のロックオンなのであった。







一歩進んで二歩下がる♪ 
この甲斐性なし!!という罵倒をロックオンへ!!



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