君はPretty Woman 5





「きっと刹那も悩んでんだろうな」
 至極真面目な顔でロックオンがまるで独り言のように食事を前にして呟く。食欲がないのか半分ぐらい残っている。
 聞き流せない性格のアレルヤは最近のロックオンと刹那の事を思い出して同意した。
「そりゃあ、ねぇ?」
 刹那にしてみれば裸を見られたのにまだ男と誤解されているのだ。それも惚れた男になのだからそのショックは大きいに違いない。
 その原因たる男は風呂を覗いた事をまだ悩んでいるのか……。まったく呑気なものだ。
 アレルヤは第三者として口は出すまいと思っていたが流石にもどかしい。
 しかし、ロックオンはそんなアレルヤの予想をさらに上回っていたのである。
「昨日、刹那の身体に触ったら……」
「触った!?」
 それは初耳だったが、そんなセクハラがまかり通って良いはずはないと声を大きくした。
「そう。なんか締まりのない身体でさぁ、ぽやんとしてやがるんだ」
 そんなロックオンの言葉にガツンと鈍器で殴られた気分になる。
 いくら鍛えていても刹那は女の子で、柔らかい身体で当たり前だ。そのうえ美少女だというのにロックオンの思い込みはどこから来るのか。
「だから、もっと牛乳飲んで筋トレしろって言ったら睨まれてさ」
 8つも下のガキの気持ちは解らんよと呟く彼はリーダーとしてやる気を失いつつあるようだった。
「ち・ちなみにどうやって触ったんです」
 それによってはアドバイスをしなければならない、決していやらしい好奇心からではないと言い訳する。
 しかしロックオンどこを触ったのたろうかか。
 刹那の小振りな胸か、可愛いヒップか。
「こう、後ろからガバッと」
 アレルヤを刹那に見立てて背後から抱きすくめる。しかし背格好が同じなのでまるっきり同じではない。まず第一に肉質が違う。
 固い、固すぎる…とロックオンが眉を顰めていると食堂の扉が開く。
「ロックオン、アレルヤ…」
 かけられた声に二人が振り向くと、親密な二人の様子を見た刹那が驚きに目を見開いているではないか。
 いつもは無表情な顔に浮かぶのは嫌悪だ。そして静かに閉じられる扉。
「誤解だ、刹那! 男は範疇外だ」
 呼び止めるロックオンの言葉が届くはずもなく、再び開いた扉の外に刹那の姿はない。
「どうしよう。刹那に男が好きだと思われたら…、警戒される!」
 頭を抱えているロックオンをアレルヤは「おや?」と見つめる。
 これはまるで意中の人の誤解を恐れているような雰囲気ではないか。いや、そう断定するには時期尚早か。

 しかし第三者としてこれだけ神経を使っているのだ。ロックオンが刹那の真実に気が付いた時どんな反応を見せるか高みの見物としゃれこもうとアレルヤは自身の食事に戻るのだった。


『刹那、君の望む変革がすぐそこに来ているようだよ』






やっと変化が!! しかしうちのアニキは一歩進んで二歩下がる鈍い男……。



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