君はPretty Woman 4




 モラリアでの武力介入という一つのミッションが終わり、マイスターとガンダムは地上の無人島へと潜伏していた。
 そこは簡易的な施設だったがガンダムのメンテナンスも可能だ。マイスターには狭いが個室もある。
 シャワーブースだけは共同であったが区切りもされた半個室が3つ。3人が同時に汗を流せるなら充分だろう。
 マイスターの中でも年長者であるロックオンはいつになく荒れる心を持て余していた。
 ティエリアの言葉も刹那の行動もロックオンの苛立ちを増長させる。
 シャワーでも浴びて気分を変えていつもの自分に戻ろうと扉を開けると先客が一番奥を使っていた。
 湯を出しっぱなしで気付いていないのか話つもりもないのか相手は黙ったままだ。挨拶ぐらいの声かけがあっても良さそうだが、自分以外はそんな社交的ではないと諦める。
 こちらもそんな気分じゃないからと無言でシャワーを浴びていたが、結局は隣が気になって気配を伺ってしまっていた。
「っ!」
 こちらが勢いよく湯を出した事で所詮簡易施設の給湯設備は悲鳴をあげるかのように任務を放棄し、一瞬水が出てきて隣から声が上がる。
 この声……。少し洩らした声で刹那と解ってロックオンはため息をついた。
 今日の戦闘でコックピットを出た刹那を殴ったのだが予想以上に軽く飛んでしまった事を思い出していた。
 そんなに強く殴ったつもりはなかったがあれはかなり痛かっただろう。謝る必要はないのに心が痛む。
 話し掛けづらくて、無言で浴びていたが段々と落ち着かなくなってくる。
 今、あの刹那と二人きりなのだ。
 フェルトに見せられたあの刹那が浮かぶ。
 あの美少女だったら正直言って殴れなかっただろう。しかしいつもの無愛想な刹那は頑なで、その場を収めるつもりで手加減せずに殴ったのだ。これが女の子であればそうもいくまい。
 どうせなら、あんな美少女が良かったのにと思ってしまいロックオンは慌てて水を頭からかぶる。もう少しで別人格であるヤツが起き上がってしまいそうになったからだなんて口が裂けても言えるはずがない。
 シャワーの個室を覗く趣味はないし、男の裸を見たい訳じゃない。
 肩の傷跡を確かめるだけだ。
 そう言い訳して……。




「アレルヤ!大変だ!事件だ!」
 刹那に気付かれないよう、シャワーブースを飛び出して、トレーニングルームにいたアレルヤを捕まえる。
「せっ、刹那に胸が!」
 そりゃそうでしょ。なんて顔でアレルヤに見られていると思いもしないロックオンは、今見た事を口に出してみて漸く我にかえっていた。
「いや、あの体型。見間違いだな。ちらりと後ろ姿だけだったし、湯気も凄かった。そうだきっと胸筋だ」
 思い出そうとしても、覗いたという背徳に記憶は不鮮明になりつつあったし、どう考えてもあれが胸とは思えない。胸板のほうが正確な表現だろう。
「俺もまだまだだな〜」
 見間違いで飛び出してきた自分に大笑いしていると背後から声がかけられた。
「み、見たのか?」
 風呂上がりだからか、火照った顔の刹那に睨み付けられる。覗いたのがバレたが男同士だから謝ってすむだろう。
「まぁ男同士だ。気にするな」
 ロックオンは自分に言い聞かすつもりの言葉であったが、ずかずかとこちらに歩いてきた刹那に何故か盛大に殴られる事となる。
「最近の子は解らん」
 赤くした頬を冷やしながらロックオンは刹那の行動を嘆く。

 解らないのは貴方です。
 そんなアレルヤの視線にはやはり気付かないロックオンなのであった。










原稿が終った開放感にこっそり更新。兄貴鈍感すぎますorz



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