君はPretty Woman 3




 妹のように思っているフェルトが背後から声をかけてくる。
「これ、」
 普段から無口な彼女が端末を差し出してきて小さく呟く。
「データ移すから貸して」
 なんの疑問もなく通信を解放してフェルトからのデータ送信を受ける。
 任務のデータかと思えば、そこにはかなり色香のある少女が映っているではないか。
 やや癖のある長い黒髪、薄いとはいえ目鼻立ちを強調するようなメイク。
「誰だ?」
「あら、間違えたかしら」
 ズームアウトしていくと女がベビードールとか呼ばれる下着姿だと判明。(残念なことに透けてはいないのでセクシー系のパジャマなのかもしれない)
 なんでこれを俺に? ここでは年長扱いでも、まだ24のやんちゃな『俺』には少々刺激が強い。
 画面は次第にすべてを映して、見知った顔が出てくる。フェルトやクリスティナ達だ。
「アレルヤが、ロックオンが羨ましいって言ってたと聞いたから」
 お裾分け。楽しかったわ。そういい残し、淡々と任務をこなしたかのように去っていくフェルトを見送ってやれやれとため息を吐いた。
 データを見ればそのワンショットだけでなく、動画まである事が判る。
 一気飲みに興じるミス・スメラギのバックに刹那の声が入っていた。
「俺に触れるなっ!」
 ったく羨ましい。
 童貞を捨てただけなく、かなり可愛がってもらえたらしい。
 最後はまたイメージのみで記念写真のような集合写真には笑顔の女の子達。その中に刹那はいない。かわりにあの美少女が真ん中で囲まれていた。
 どこか見覚えのある顔。まさか、これが刹那なのか?
 いや刹那は男だ。小麦の肌に黒髪。赤にも見える瞳は同じだが決定的に性別が違う。
 そもそも比較する方がおかしいのか。
 他の類似点といえば、身体の凹凸がないという事ぐらいで、この少女に有り得ないぐらいの色香がある。
 凝視していて左肩の傷跡が目に入る。
 それが決定的だった。確か刹那にも同じような傷があったと思い出したのだ。
 まさか……。
「刹那の女装か?これ!」
 こんなにも似合うものなのか。いや俺だってかなりの美少年だったから、子供は見た目さえ整えればどちらにも見えるのだろう。
 しかしこの色気は生半可ではなかった。


 シミュレーション中の刹那と一緒になる事があって、意識はついそちらに向いてしまう。しかしパイロットスーツの身体つきは少年だし、どう見ても女には見えない。
 フェルトの方が発育が良いぐらいだから刹那が女の子とみるのは無理がある。

 それでも。
 あんな物見せられて平静でいる自信がなくなっていた。
 刹那が美少女に見えただなんてどこかおかしいのだろうか。それもかなり色香があって、けっこう好みのタイプだったのだ。
 あの無愛想な顔のもう一つの顔。

 刹那が同性と解っていても目が離せない。
 同性愛について自分には関係ないと思っていたが、刹那とならあり得ると思う自分にロックオンは戸惑う。
「ちょっとヤバくねぇか、俺?」
 高鳴る胸の鼓動を錯覚だと誤魔化して。


 Xdayがすぐそこに迫っている事をロックオンはまだ気付いていない……。











原稿の息抜きにこっそり更新しときます☆しかし兄貴はいつになったら気付くんでしょうか(笑



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