真夜中の人魚姫 6




 よくもまぁ2年間も誤魔化せたものだ。
 ロックオンの目の前にあるのはみまごうことない女の身体。
 なでらかな肩から伸びる細い腕。形の良い胸に細いウエスト。スラリとしたの脚には隆々とした筋肉はない。少女の域は抜けないがまさに女の身体だ。
「どうした? 早くタオルをくれ」
 これ見よがしに身体を寄せてくる刹那。
 胸の膨らみに思わず喉がなってしまっていた。
『その年で哀れだな』経験がないのかと嘲笑され、その顔は明らかに今まで気付かない鈍感男を笑うものだった。
 確かにこの体型で気付かないなんてありえないだろう。隠していたから気付かないというレベルではない。
 刹那の勝ち誇った顔はどうだ?
 からかわれているのだと気付けば腹立たしさが極限に達していた。
「男をからかうもんじゃないぜ」
 そっちがそのつもりならこちらだって相応の対処をしてやろうじゃないか。
 早くタオルをと手を伸ばしてきた刹那の腕を掴み、こちらに引くと見せかけて押し倒す。
 もちろん背中を打たないように自分の腕の中に抱き締めるような形でだ。
 むんずと掴んだ胸はまるでマシュマロのよう。倒れてもなお形を保っている。
「へー。形良いだけじゃないな」
 片手から少しこぼれるぐらいの大きさを下から揉みしだけば、久しぶりの女の感触に下半身は正直だった。
 こんな小娘に情けない。
 刹那には知られてないだろうか?
 いやこの顔はバレている。男の滾りを認識したのか刹那の表情が固くなり唇が震えているではないか。
「悪い、ロックオン。退いてくれないか…」
 か細い声に頭を殴られた気分だった。
 俺は何をしていた?
 ゆっくりと刹那から身体を離しタオルで身体を隠してやる。
「子供ってだけじゃなく女だとはね…」
 動揺を悟られぬよう皮肉を言えば刹那は可哀想なぐらい小さくなっていた。
「……悪かった」
 謝った刹那の声は成人男性のよう。
 だからか? 気付けなかったのは。
 しかしいくら隠す意図があったからと言って、男か女くらい気付いても良さそうなものだ。
 騙されていた自分に呆れるばかりだった。
 タオルで隠したとはいえ綺麗な脚は隠しきれていない。その手元が震えている。
 うつむき加減で顔が隠れれば、そこには自分の知る刹那はいなかった。
 可憐なまでの少女がそこにいる。
 手に残る柔らかな胸の感触。
 誰か嘘だと言ってくれ。これは夢の続きなんだと。
 可哀想なぐらいに怯えた刹那。
 そんなつもりはなかったとは今さらだ。

 ぎこちない空気はさらに重くなっていた。





短いですが区切りの良いところで…



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