Heaven's Gate 〜天国の門〜 2



 いい加減ケリをつけようと考えたのだ。
 世界は統一され、ソレスタルビーイングはまた水面下に潜っている。
 ニールとして第二の人生を歩みはじめ、もう8年。当初は回復は難しいと言われた身体の傷もすっかり癒えた。
 だが心に残った傷はまだ癒えずにいた。
 正確には傷ではない。感傷というものだろうか。
 思い出すのは宇宙を駆けた日々。ソレスタルビーイングのガンダムマイスター
 成就どころか打ち明ける事さえ出来なかった恋を思い出す。
 そう、俺は恋をしたのだ。8才も年下の少年に。
 中東出身の色味の濃い肌の色。艶のある漆黒の髪に赤にも見える瞳。
 四肢は細く、少年らしい身体つきはまだまだ子供の域を抜けきらない。
 その刹那ももう24才だ。さすがにもう大人の男になっているだろう。
 背も伸びてあの華奢だった肩も逞しくなったに違いない。
 あの戦いで大怪我をして奇跡的に救助されても、マイスターとして使い物にならなくなったから自主的に姿を隠した。
 刹那も致命傷に近い損傷を受けたと聞いたが、一度も会わないまま8年が過ぎた。記憶の中の彼はまだ少年のままで成長することはない。
 組織には動向を監視されていたのは知っている。だが、身体が完全に治癒した時にはデュナメスのパイロットは別にあり、そして自分は利き目に後遺症を残したのでマイスターとしては使えな
くなったと判断されたのだろう。
 実際は利き目だけではなく利き手にも後遺症は残っているが日常生活に支障はない。
 かつて有名だった保養地。刹那はこの地で暮らしているらしい。
 今さら現れたところで歓迎されるなんて思っちゃいない。
 ただ一目だけでも会って過去の想いは誤りだったと思いたかったのだ。
 大人の男になったと思い知ればこんな想いは消えるだろうと。










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