愛を信じられない子供




 こんな感情を植え付ける奴はあいつらと一緒だ。
 甘い言葉で騙して搾取する。
 親もまた同じだ。食べ物のために売られる子供。同情を得るために親が子供の手足に不自由を強いる。
 哀れなストリートチルドレン。物乞いをして、命をさらして生きてきた。
 学んだのはたった一つ。
 所詮信じられるのは自分だけだという事。
 無口な代わりなのか雄弁な瞳の色に拒絶を見てとってロックオンはやれやれと嘆息してみせた。
「俺の事は信用してもらいたいね」
 作戦行動では信用に足りる男だとシュミレーションでも証明済で否定する材料はない。
 あんな大人とロックオンは違う。
「……わかった」
 渋々と返事をした刹那にロックオンは笑顔を見せる。
「ずっと側にいるからな」
 掠めるようにキスをしようとしたロックオンをぎりぎりでかわして、刹那は一歩下がる。
 前に一度してからというもの、頻繁に仕掛けてくるロックオンの悪戯。
 その意図と真意を図りきれなくて刹那は戸惑うのだ。
「俺はお前が好きだから、任務とは切り離して一緒にいたい」
 いつの間にか寄せられた好意は子供にも解るぐらい深い感情だ。
 単なる友人や仲間の好きではないと解る。
 だが裏があるのではと経験上からもロックオンを信じられないのだ。第一に男同士で好きだとか裏があるに決まっているようなものだろう。
 それでもロックオンの言葉はじわじわと浸透していく雨水のよう…。まるで乾いた大地を潤す恵みの雨さながらに。
「その意味では信用なんてしない」
「ったく素直じゃないね」
 心に入り込む彼を切り離せない。
 いつか彼がすべてになって。 彼にすべてをさらけ出す。
 そうなると守るものは何もなくなって、一人で生きていけなくなるに違いない。

 だからその手を振り払うのだ。







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