思い出したかのように見る夢はどんどんエスカレートしていった。夢の中のボク達はもう全裸で、トリコさんがボクの全身にキスを、キスを……。
夢を思い出してボクは身体中の血が沸騰するところだった。最近思考がおかしいのかもしれないと少しブルーな気分になる。
結局ボクはトリコさんに誘われてグルメシティへとやってきていた。
焼き肉へるすぃ〜の店の前にまできてボクはようやく現実を受け入れていた。
そこは高層階にあるためにトリコさんの紹介でなければ入れないクラスの焼き肉屋だ。食事に誘われたのだと知って、それも前回の約束を守ってくれただけだと知って申し訳ない気分になった。これはただの食事なのだ。
夜からの誘いという事で、いきなりホテルとか考えた自分が恥ずかしい。
そこでボクはオゾン草のハントに誘われて一も二もなく承諾したあと、精算金額にびっくりした。
「あっあの支払い……」
「オレが誘ったんだし、殆どオレが食ったんだから気にすんな」
それでも展望個室だなんて部屋代だけでも別料金がかかっていそうだ。
なんか下心ちっくで怖い。
いや、トリコさんが下心でボクに接してるなんて想像する方が怖い。正気に戻れボク。
「小松には、頼みたい事もあるしな」
突然まじめな顔をするもんだからこちらも息を飲む。
オレに小松のバックバージンをくれ……なんて言われた日にはどうしたら……。いやまぁそれぐらいなら、桁はずれの食事代金なら安いものだ。
ごくりと生唾を飲んだもののその日は解散。答えを聞けないまま翌日には専用マッハヘリに乗っていた。
空気が若干重い。
トリコさんとの会話。
「オレとコ……」
そこまで言いかけたところで言葉を濁したトリコさんは続く言葉を持たなかった。
いったい何て言い出すのか怖い。
こ、子作り? 婚約?
それでなくとも、これからは守ってやるなんて、あなた誰ですか状態で……。
スカイプラントでの野営。見上げると星がいつもの三倍は多く輝いている。
「すごい、こんなに星が」
「星、キレイだよな」
「はぁ……」
ボク相手に必要でない会話ですよね?
『あたりまえだろ。標高考えろよ』とか昔のトリコさんなら返ってきそうな場面。
以前はもっとドライだったのにボクに向ける笑顔が眩しすぎた。
登頂二日目の朝。
「さぁ。こっちこいよ小松」
「そんな……」
ぞわりと総毛立つような声音。朝っぱらそんな……と思わず頬が染まる。今気付いたけれどトリコさんってば声も顔もエロい。
トリコさんがボクを前にしゃがむ。
「何遠慮してんだよ」
おんぶしてくれるのだと知っても安堵は出来なかった。
密着度が高すぎて緊張でガチガチになる。
トリコさんの太い首に抱きついて、視線が近くなれば余計に胸の鼓動が早くなっていく。
目の前にトリコさんの髪がある。なんてキレイな青だろう。
そして、トリコさんの匂い……。
「小松、心拍数上がってんな。リラックスしとけよ」
声をかけられて気付く。誰のせいですか、誰のっ!!そんな罵りたい気持ちをボクは笑ってごまかした。
野菜の天国に到着した時もすごくテンションが高くてボクはすっかり忘れていた。トリコさんを避けるつもりなのを。
そしてオゾン草を見つけた勢いで、コンビになってしまっていた。パートナーになること自体は、美食屋と料理人なら何もおかしくはないし歓迎している。
でも夢の中のトリコさんが言うならパートナーとはつまり肉体関係もありで……。
(ヤバイ……)
ボクは冷や汗をかいていた。
なるべく接触を避けようと思ってたのに。コンビを組んだらますます避けられないではないか。
もしかして。
どんどん深みにはまっている?
トリコさん誕生日記念更新強化中!!!なんとか三日連続更新!!!
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