小松、小松。そうボクを呼ぶのはトリコさんだ。
「こっち見ろよ、小松」
少し拗ねたようなトリコさんの呼びかけ。
「トリコさん……?」
「なんだよ、よそ見して」
「あっ、すみません……」
あれ? トリコさんと話なんかしてたかな? ボクは意識を無理矢理戻す。
疲れてたのかな。ちょっと意識が飛んでたのかもしれない。
「おい、大丈夫か?」
心配そうなトリコさんがボクの目線に合わせてくれていた。
そんなにボク、おかしかったかな? でも大丈夫。どこも悪くない。
「もちろん大丈夫ですよ、心配させてすみません」
「じゃあ、続きな」
トリコさんの顔が近づいてくる。そして間近までくるとボクを見つめてにっこりと微笑んだ。
ちょっと近付きすぎですトリコさんっ。
ボクが後ろへと一歩下がろうとすると、トリコさんはボクの腰へと腕を回す。
ふと、違和感。
「あっ、あのトリコさんどうして、その、裸……」
上半身だけではあるけれど、筋肉が見事に乗った身体がボクの目の前にある。まぁ割と裸率の高い人ではあるけれど、ちょっと様子が違う。
「なんだよ、今更。こっちが照れるだろ」
「は、はぁ……」
今更ってトリコさんは言うけれど、でもやっぱり様子がおかしいです。
どうしてボクをそんな目で見るんでしょう。優しいのに熱っぽくて。それでいてとても幸せそうな顔をしたトリコさん。
ちゅっ。
「っっ」
それは、トリコさんがボクの唇へと音を立ててキスをした音だった。
「やっと……、オレのものになる覚悟をしてくれて嬉しいぜ」
ええええぇぇぇぇ。そっそれって? キスをして『オレのもの』って?
「にぎゃあああぁぁぁぁ」
バクバクと心臓が高鳴る。身体から飛び出るんじゃないかと思う程だ。
だけど、その瞬間夢だという事実に気付いた。
「ゆ・夢……」
なんていう夢だ。トリコさんがボクにキスするなんてありえない。
ここでトリコさんが隣で寝ているってオチもなくてボクはほっとした。
何か変なものでも食べたか、寝る前に見たニュースか何かが脳を刺激したのかもしれない。
それは些細な夢だとボクは記憶の片隅に夢を追いやって起き出した。
今日も一日が始まる。
1はシブのみの公開でした。トリコさんお誕生日おめでとうって事で更新強化中
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