「なっ、頼む先っぽだけ!なっ先っぽ!」
さっきからトリコさんは頭を下げてボクにむかって懇願しているんだけど、はっきり言って意味が解らない。というか解りたくない。
ボクも男だから大体この展開はよく知っているのだけれど。
しかし男同士だから有り得ない展開だ。
じゃあ一体どういう風の吹き回しなんだろうか。
第一にトリコさんは珍しく酔っ払っているうえに、ソファーにむかって土下座しているのだ。
「ホントに先っぽだけだって!」
一体何の先端の話か。
さっきからボクが酒のあてに食べていた金色スルメでも食べたいのかもしれない。
きっとそうだ。そうだと思い込みたい。
「くそっ!もう我慢出来ねぇ!! 小松ぅ!」
トリコさんが雄叫びをあげてボク(ソファー)に襲い掛かったかと思うと、そのまま鼾をかいて寝てしまう。
やれやれ。トリコさんがボクをソファーと誤認してくれてて助かった。あのままだとがっちりホールドされて朝までコースだ。
どうせ目が覚めたら忘れてるであろうトリコさんにボクは毛布をかけた。
でも。もしトリコさんが素面の時に懇願されたらボクはどう答えようか。
答えはまだ出ない。
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