ボクの周囲にいる人は本当にすごい人ばかりだ。仲良くお付き合いさせていただいているのが本当にもったいないぐらい。
その親しくさせてもらっている美食四天王と呼ばれる四人が集まるのは月に一回。ボクが総料理長を務めるレストランだ。
この日ばかりはレストランは貸し切りになる。というか食材の量と労力を考えると貸し切りにでもしないと対応できないという裏事情もあった。
しかし何故だろうか。いつも仲良く一緒に食事にくるかと思いきや、四人の雰囲気はいつもの事ながら良好とは言いがたかった。
それでも一通り食べ終わったトリコさんが葉巻樹をふかす。
「いやー、この間小松そっくりなやつが出てるAVみつけてさー。あれ、小松だろ」
突然話を振られてボクは皿を取り落としそうになった。
「失礼な! ボクはAV男優になるような自信も暇ありませんよ」
そりゃあ企画物で、素人がAV女優と絡めたりとかあるだろうけれど、残念なことに人前でプライベートを晒す勇気はない。第一に料理に携わっている方が余程萌えるってもんだ。
「いやー、あれはマジ小松だったね」
トリコさんのどや顔が憎たらしい。アンタ、人をそんなにAV男優に仕立て上げたいんですか。
というかAV借りるとかトリコさんも案外お寂しい下半身事情ですね?
指を指して笑ってやろうと思っていたのに邪魔が入る。
「そそ、そんなにそっくりなの? ボクの小松君にっ」
「るせ、ココのもんじゃネだろ」
「小僧、どうなんだ」
取り乱してるのがココさん、突っ込んでるのがサニーさんで静かに怒ってるっぽいのがゼブラさん。
「だからー、皆さんならともかくボクみたいなのがそんなAVに出演して誰が得するんですか」
ブサイクな男に陵辱されるとか、そんなキワモノだろうかと思えばさすがにボクもへこむ。
「チョーシのんなよ、小僧の価値は顔でも身体じゃねーぞ」
「そうだぜ、小松ぅ」
「それ、微妙に誉めてません」
まったくゼブラもトリコさんもデリカシーってものが欠落してるったら。
「でも、そのビデオとても気になるよ。小松くんにそっくりなんだろう、トリコ?」
「あぁ。マジそっくり。オレ、それで抜いたもんな」
「くっ、そのAV女優になりたいっ」
「ココ黙れ」
サニーさんのツッコミがなければボクもメルク包丁で実力行使に出たかもしれない。
それに今さらりとトリコさんが怖い台詞を言ってたような……。
「小松がバックで突っ込まれてよー、あんあんしてる顔のアップなんかマジもう下半身直撃」
ああ、やっぱり聞き違いじゃなかった・・・。
というか、さりげなくボク本人になってません? それにボクが突っ込まれてるんですか? で下半身直撃ってなにがです?
だんだんと怖い妄想が形になってくるこの恐怖は半端じゃない。
てっきりボクそっくりな男優かと思いきや、話の流れからすると女優なんですよね。
「チョーシにのんなよ、トリコ」
「そうだよ。それに本当に小松くんが突っ込まれてるのかい?」
「えっ松が?」
「そうそう、小松がつっこまれて乱れまくりなんだぜぇ」
ボク、この四人を捌きたいです……。
まったくどうしていつの間にAVに出演しているのがボク自身になっているんですかねぇ?
断じてボクはAV男優にもAV女優にもなった覚えはありませんよ。
「小松がイく瞬間、一時停止してその顔だけで三発は抜いたぜ」
トリコさん、自慢げに言うの勘弁してもらえませんか? それ全然自慢じゃないし、誰も羨ましくなんかありません。
……と思うのはボクだけだったらしく、ココさんもサニーさんもゼブラさんまでもが顔を紅潮させて鼻息が荒い。
「そのAV貸してくれ」
「(オ)レが先だ」
「チョーシにのるな、オレが先だ」
我先にとトリコさんに交渉する四天王の皆さんがよくわかりません。今、ボクそっくりな女優っていいましたよ。
つまりどれだけブサイクな画面になっているか。想像しただけでもげんなりくるというのに……。
トリコさんも、どうしてボクそっくりのAV女優で抜けるのか意味がまったく解りません。
そうだ、きっと四天王の皆さんはボクをからかって楽しんでいるんだ。そうすればこの問題ありまくりな状況も説明がつく。
まったく……。人をいじって楽しむのもいいかげんにしてくださいよ?
せめてもう少し良い雰囲気で食べてくれればまぁ我慢できるけれど……。
出来れば、少し距離を置きたいボクです。
『それは四人の紳士協定』
してコマ。まだ誰も小松くんゲットしてない感じで
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