夜はまだ浅く、やっと周囲が暗くなり始めたばかりだが、視力の良いココにとっては何の障害にもなりえない。
「小松くん、こんばんは。突然押しかけてごめんね」
ココは小松のアパートの扉を開く。勿論カギは掛けてあってが、ココも美食屋の端くれだからして、力には自信があった。だから決して意図的に壊したのではないと本人の名誉のためにも主張しておく。
「あっ、いらっしゃいココさん」
奥から出てきた小松のにこやかな笑顔に、一瞬にして癒されるが、ココの嗅覚はその匂いに気付く。
「…生臭い…、いやイカ臭い? まさかこれは、せ…」
途中で口にするのは憚れたが、独特の匂いが小松からする。
突然の卑猥な発言に小松の頬が赤らんだ。
「料理してた途中なんで、…その」
「はは、そうだよね、清純派の小松くんがいかがわしい事なんかしないものね。でも、もし一人でするくらいならボクと…」
ココが小松の手を取ろうとした瞬間、
「あー。どうした小松ぅ。客か?」
小さなアパートに不似合いな男が顔を出す。
それも裸で出てきたトリコにココが固まり小松は動揺した。
「うわー!服、服を!」
隠そうにも体格差で隠しきれるものではなく、見たくないものを見、知りたくないことを知ったココが怒りに言葉を震わせた。
「トリコ、よくもボクの夢を踏みにじりやがって!」
毒と涙が混ざって床に落ちては床を溶かしていく。
トリコが裸で出てくるということはつまり、いかがわしい事をしていたという事で。確かに今は料理の準備をしていたかもしれないが、その前にナニをしていたかなど言わずもがな、なのであった。
「お前いい加減に現実見ろよ?」
トリコマ←ココ
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