恋は盲目、愛は妄想



 やっと手に入れた。平均よりも小柄な小松は、オレにしてみれば腕も腰も折れそうな程だ。
 ちまちまと脱ぐのを待てず右手のナイフで切り裂く。
 現れるた白い肌は、その平均以下の風貌にそぐわないが、何故か情欲を駆り立てた。
 一刻も早く一つになりたいと押し倒せば、固く目を閉じて震える小松がいた。
 それは平均以上の体格のオレが組み敷いて良いものかと躊躇するには充分過ぎる姿だった。
 オレの下で身体を強張らせる小松に直感的に思う。
「お前、初めてじゃねぇな」
 これから何をするのか、正確に知っているような態度。
 追及するオレの言葉に小松は観念したらしい。
「実はボク…、」
 その告白を聞きたくないと耳を塞ぎたかったが、何故か身体は動かなかった。
 小松の告白が続く。
「ボクの身体小さいでしょう?あまり恵まれた環境じゃなくて。小さい時はいつもひもじくて。頭も良くなかったから出来る事も限られてて……」
 段々と小さくなる語尾。震えている肩。
 だから身体を売ったのだろうか。いや売らざるを得なかったというのが正解か。まだ幼さの残る小松が(今も充分見た目は童顔の部類だが)男を受け入れなければ生きていけなかった理由に……。
 目の前が怒りで赤く染まる。




『ちゃんと出来たらご飯食べさせてくれるんですか』
 だったら我慢します。そう言って小松は身体を開く。
『っ痛……』
 痛みで歪む顔。涙と鼻水でぐちゃぐちゃで。その嗜虐心をそそられる表情は男を興奮させたのだろう。




「そいつ、まだ生きてんのか?今から行ってぶん殴ってやる!」
 オレの小松を汚した罪は重い。
 出来るなら過去にまで遡りたい気分のオレを小松が止める。
「ちょっとトリコさん!どんな想像したんですかっ!ボクは住み込みで奉公に出ただけです!!」
 そう慌てて否定する小松だったが疑わしいことこの上ない。
「……親方はたまたまそういう趣味の人でしたけど、ボクはやっぱり範疇外で。まぁ耳年増というか…。同じ部屋の子から聞いてちょっと怖くて」
 だから怖がってすみませんと頭を下げた小松にオレの怒りのゲージも下がっていく。
 続きをしましょうと、頬を染めて恥じらう姿なんぞ可愛いはずがないのに可愛くて。
「やっぱ殴りてぇ」
 今よりずっと可愛い小松を知ってるそいつが憎らしかった。きっと昔の小松も今と同じく目を輝かせているに違いない。料理人になるという夢を叶えてもまだ上を目指し……。


 というか、そもそも小松が可愛く見える時点でダメな気がした。



 恋は盲目、愛は妄想




 トリコさんダメじゃないですよ、小松は可愛いですよ? 
 と、マジレスしてる自分がダメな気がします。








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