グルメ125話派生




 ホテルグルメを貸しきって、従業員達だけでのパーティーが行なわれている。その中心人物は料理長である小松だ。
「壮行会だなんて、そんなだいそれた事…」
 小松が遠慮気味に辞退しようとしたのだが、それを周囲が阻んだのだ。
「だって料理長があのグルメ馬車に乗るんですよ」
 予約5年待ちの超グルメな旅だ。世界中のグルメ都市を2年間で旅をするのだ。
「いつの間に予約してたんですか〜、水臭いですよ」
 副料理長がおいおいと泣いている。
「いや、トリコさんが急に…」
 包丁を手に入れたその帰り道、「明後日出発だから」と誘われたのがまさかグルメ馬車での旅とは…。
「さすが四天王スケールデカイよ」
「ボクたちが敵わない訳ですよね」
「なんてたって2年もかかる旅でしょ、寂しくなるなぁ」
 などと口々に別れの挨拶をされた小松は戸惑う。
「いや、ボク達途中下車だし、別に人間界一周なんてしないから」
「えぇそうなんですか?」
 たんにメロウコーラをハントしに行くだけなのにどうして話しが大きくなっているのか。
 確かにいきなり豪華客馬での旅は寝耳に水だったが…。
 そんな小松に従業員爆弾を落とす。
「てっきり新婚旅行とばかり思ってたんですけど…」
「違うっ、違うよ、誤解だって!!」



「なんて会話があったんですよー」
 と、遅くなった理由を小松が話す。包丁にも見蕩れていたけれど、レストランのスタッフ達を納得させるのも大概時間がかかったのだ。
 だが、そんな小松の言葉に3人が固まる。
 そして一番に口を開いたのがココだった。
「えっ、トリコ。小松くんに話してないの」
「ったく言葉たらずたっつーの」
「えぇ? 何がでしょう?」
 ココやサニーの態度に小松は嫌な汗が流れてくる。嫌な予感とでも言うべきか。
「小松くんのその包丁って婚約指輪ならぬ、婚約包丁だって聞いてるよ」
「(そ)れに、今夜結婚式するからって。あのハゲに言って無理矢理このチケットとったんだぞ」
 ボク達に祝ってもらいたいってトリコが言うからと、二人は単独で向うはずだった目的地までの足をこのグルメ馬車に決めたのだ。
「えぇぇぇ、聞いてませんよぉぉぉぉ」
 ちょっとトリコさん!!!! と、小松が叫べばトリコは申し訳無さそうに頭を掻いてみせた。
「いやー既成事実作っちまえばこっちのもかなーって」
 このまま放っておくと他の誰かに取られそうだとトリコが力説し、
「悔しいけど、小松くんの幸せのためなにらボク達身を引くから」
 と、ココやサニーはおめでとうと口にするではないか。
 ここで一番不幸なのは常識人たる小松である。
 どうして豪華客馬の旅が新婚旅行扱いされ、そしてパートナーのトリコと結婚式を挙げねばならぬのか。
「いやいやいや、ちょっと待ってくださいって、ボク、トリコさんとコンビ組みましたけど、そっちのパートナーだなんて一言も・・・」
 小松の言葉に空気が凍る。
「おいっ小松、それはねぇぞ!! お前、男心を弄ぶのかよ!!! オレはてっきり・・・」
「そうだよ、美食屋とのコンビというのはそんな軽々しいものじゃないんだよ」
「あーぁ、トリコのヤツ(か)わいそー」
 落ち込むトリコを慰める四天王の二人に小松は脱力するしかなかったのであった。
「で、これ。明日には皆のとこに届くからな」
 見れば結婚報告ハガキがトリコの手にある。
「もう、好きにしてください…」

『この人達に常識を求めたボクがバカだった…』

 肩を落としつつ食事を始めれば、また四天王(-1)による会話が再開される。
「ボクはトリコと小松くんの子供、早く見たいなぁ」
「松に似た女の子とか悲惨じゃね?」
「おいおい、お前達、ちょっと気が早いぞ〜」
 仲良く談笑する三人に小松が叫ぶ。


「子供は産めませんからっっ」


 今度、この豪華客馬に乗る機会があったなら、2年間かけてみっちりと四天王達に常識を教えねばなるまいと誓う小松なのであった。









即興で書きなぐってみました。あえてダンスには触れない。でもあーんな話やこーんな展開がってのはあるんですが。ネタ被りをさけてみたというかなんというか・・・。




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