101回目のプロポーズ




 一度行ってしまうと今までの自制は何だったのかと思うぐらいに、小松はグルメデパートへとに足を運んでしまっていた。
 ちょうど栗坊鍋がセール中だったし、包丁の煌めきを見ているだけでも幸せになれる。0の数さえ数えなければこれほど幸せになれる場所はない。
 そんな小松が、うっとりとショーケースを眺めていると頭の上から声が降ってきた。
「お前2時間はその前にいるよな」
「トリコさんっ!」
 小松が2時間も鍋の前でいた事を知っているトリコもトリコだろうが小松は気付かない。
「そんなに欲しけりゃ買えよ。良い道具を持つのも大事だぜ。何なら買ってやろうか?」
「トリコさんでもそんな冗談言うんですねぇ
 家を買う頭金を取り崩せば買えない事もないんですが、今はまだ無理です。もう少し実力を備えてからですよ、と小松はあくまでも謙虚だ。
「値段も値段だけど、栗坊鍋は一生物っていうからなぁ」
 小松が躊躇うのも無理は無いだろう。だが高価ではあるが一生使える代物だ。
「なぁオレの事も一生物にしねぇ?」
 夢中で鍋を見つめる小松にトリコは提案する。その真意は勿論・・・。
「そんなトリコさんを物扱いなんて出来ませんよ!」
 とんでもないと即座に辞退して恐縮してみせる小松にトリコは溜め息をついた。
 そこは『一生』のところに反応するところじゃないか? とトリコは肩を落とす。遠回しであるけれどプロポーズはこれで101回目。小松に通じる様子は皆無なのであった。




 『ったく、なんのドラマだ?』

 



2時間ストーカーのドラマです



NOVEL TOP






TOP