夕暮れ・宵闇・蝉時雨



身体に纏わり付くような空気。ねっとりと重く、まったりと絡み付く。
「ねぇ鴆くん。身体が、熱いよ…」
身体の内側からほてるような熱さ。幼さの残る体をリクオは持て余す。
投げ出された手足は細く頼りなげで、鴆が差し出す手を待っている。
着物の裾は乱れ、膝よりも上の柔らかそうな内腿が誘うように鴆の目を楽しませていた。
「ねぇ、鴆くんってば…、早くしてくれないとボク…」
自分の意思では動かせない身体。早くこの熱さから解放されたい一心でリクオが鴆にねだる。
「さぁリクオどっちにするよ、選ばせてやる」
鴆の手の中で固さを保つソレをリクオは羨望の眼差しで見つめる。
「おっきいの、…ちょうだい。ボクの口に入れて」
目を瞑って涙さえ浮かべるリクオの頬は赤く染まっていて淫靡な様をさらけ出す。
「さあ口を開けな」
鴆の手の中のモノを確かめるようにリクオの舌が這う。
「んっ、おいしい…。鴆くん、意地悪しないでもっとちょうだい」
「そう急かすなって。まだまだたっぷりと味わってもらうんだからよ」
鴆はリクオの口の中からソレを取り出すとリクオの了承も得ないまま深々と突き刺すのだった。



傍らでその様子を見ていた雪女が我慢ならないと拳をふるわせる。
「卑猥です!!」
もうこれ以上は見てられませんと抗議するつららに対し、鴆とリクオは顔を見合わせた。
「どうしたの?つらら。ボク、つららの機嫌そこねる事した?」
「そ、それは…」
顔を真っ赤にしたつららに訳知り顔の鴆が言葉を遮る。
「いやぁ、それにしてもこの砕いた氷の山はいいもんだな。おまけにこの氷菓子もうまいもんだ」
砕いた氷の山に突き刺すように、いわゆるシャーベットや、カットした果物の串が立っている。
「ちょっと、鴆くん、その一番大きいソーダはボクのだから」
取ってと駄々っ子のようなリクオ。幼なじみの前ならではの様子は無邪気そのものだ。
「ったく、腕が上がらなくなるまで日焼けすんなよ」
日焼けしすぎたせいでリクオは腕も上げられない状態で。おかげで先程から、アイスを口に入れろとか団扇で扇げとかこき使われている鴆なのだ。
決して卑猥な事をしていた訳ではない。
「だって日焼け止め塗ってもらおうとしたら清継くんってば鼻血だすし」
日焼けして赤くなっているのは肩ばかりではなく、頬や鼻までもが赤い。
日焼けしたくないというから特製の軟膏も持たしてあったのに。確かに少し白みがかった半透明でやや柔らかく仕上がったせいか、手にした時、アレに似ていると誰もが思うだろう。
それをリクオの身体に塗るとなると鼻血を出しても仕方ないと鴆も納得した。
「そんなに痛いなら薬塗るから脱ぎな」
鴆の申し出にリクオも、
「じゃ、脱がして…。でも優しくしてくれなきゃダメだよ」
と、甘えっぱなしだ。
とうとうつららが立ち上がる。
「お二人の、か・か・監視役を拝命したこのつらら、もう耐えられませんっ」
部屋を飛び出した彼女に残された二人が顔を見合わせた。
「どうしたんだろうね、つらら」
「まぁ予想通りだが。ちったあリクオも解ってくれれば助かるんだがなぁ」
一人愚痴混じりに鴆は明け放した障子を閉めた。



そして誰にも聞こえないようにリクオも呟く。
「ホントに解ってないのは鴆くんなのにな」
つららが耐えられないのは二人の雰囲気じゃない。ボクが鴆くんに対してあからさまなんで耐えられなかったんだろうとリクオは推察する。


つららが退室してちょうど良いと、リクオはまた優しくて少しニブイ義兄弟を我が儘の限りで翻弄するのであった。





卑猥ですみません。昼若に「おっきいのちょうだい」って言わせたかっただけです。えっ変質者?


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