猩影とリクオが急速に仲良くなっていくのを鴆は苦々しい面持ちで見つめていた。
三代目に就任してもうすぐ四ヶ月。
人間の時間よりも妖怪としての時間が増えるのかと思いきや相変わらずリクオは人間としての生活を守っている。
「来週テスト期間中だし、総会の日を前倒ししよと思うんだけど・・・」
そんな会話を受けて、「リクオの好きにすれば良いじゃねぇか」としか言葉に出来ない自分を歯痒く思う。
親分衆の集まりをそんなことで変更するなんてどうかしているとも思う反面、リクオが奴良組の三代目なのだからとやかく言う筋合いもないのだ。
悶々としながら初代に薬を届ければ、玄関先に猩影の姿があって、ちょうど出るところに見受けられた。聞けばリクオに会いにきたという。
「学校とやらじゃねぇのかい。で、猩影はリクオの所に行くつもりか?」
「・・・今すぐ若に会いたいんだよ」
関東大猿会の親分である猩影がリクオに会いに来て、切なそうな表情をみせた。
どうしてもリクオに会いたかったらしい。平日だから学校じゃねぇかと言えば納得したような顔をする。
「そっか、オレ。うっかりしてたぜ」
聞けば猩影も学校とやらに通っているらしく、うっかり登校するのを忘れていたらしい。
「じゃあ鴆の兄さん、オレちょっとて若に会いに行ってくるんで、あっ若の帰りは遅くなると姐さんに言っといてください」
嬉しそうに駆けていく猩影の背を見つめ鴆が呟く。
「三代目になったからってオレのモンになるという道理はねぇよな」
あの時は、リクオが三代目にさえなれば良いと思っていたのに。今は違う。
『今は、お前が欲しい』
三代目になってそれすら言えない状況を望んでおいて、大概自分を大馬鹿者だと思う。
リクオが三代目を継がないままだったら今頃二人だけでいたかもしれない。あぁやって組の者達が会いにくる事もなかったのかもしれない。
苦々しく思いつつ猩影の背中を見送った鴆は、次の総会の日にでも飲み明かすかと、気を取り直して朧車に乗り込むのだった。
「えぇ、鴆くん来てたならひき止めといてよ、おじいちゃんってば気が利かないんだから」
「こりゃ!!! 誰が孫に懸想する男を引き止めるモンか、さっさと朧車呼んでやったわい」
「おじいちゃんっっ」
というような会話があったのかどうか・・・
とりあえずかなーり短編ですが、昼若が本誌でちょっぴり活躍しそうだったので。昼若出してくれないと書けないんだもん。燃料プリーズ!!!
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