縁側に座ってリクオは鴆の月見酒に付き合う。今夜は満月で庭木も月光を受けて銀色に輝いていた。
会話が途切れ沈黙が二人を包む。リクオがどうしたかと視線を鴆に移せば熱っぽい視線がリクオに注がれているではないか。
「……いい加減に鴆の雄の本能ってもんをリクオは理解しなくちゃなんねぇ」
唐突な言葉にリクオは首を傾げる。
「鴆く、ん?」
雄の本能ってつまりそういう事?何を意味するか思い当たる事を想像してしまい、まだまだ慣れることのないリクオは頬を染める。
「あの……、夜の姿に変わろうか?」
今の自分に知識としてあっても経験はない。だが夜の自分なら鴆の情欲を十分に受け止められるだろう。
しかし鴆は、
「ダメだ、オレは今の昼のリクオがいいんだ」
と、リクオの提案を一蹴にしたのである。
素のままのリクオが良いと断言した鴆にリクオの動きも止まる。
まさか鴆の口からそんな言葉を聞くとは思わなくて喜びの反面リクオは戸惑ってしまう。
ボクで良いのかと即座に反応出来ないでいるリクオの腕を鴆が掴む。
「もう我慢は終いだ」
引かれた腕の力強さは到底リクオが逃げられるようものではなかった。
期待と不安が入り混じる。もしかして冗談じゃないかと鴆を見ればゆっくりと身体が引き寄せられた。
鴆の手がリクオの膝に置かれ、着物の袷から忍び込み、普段から日に当たらない白い腿があらわになる。
「ずっとリクオが欲しかった」
今夜こそオレのものにするからな。そう口にした鴆に躊躇いはない。肩を抱き込まれ、鴆の器用な手がリクオの秘所を伝う。
「ん、鴆くんっ」
気が付けば鴆の身体がリクオの膝を割って入り、簡単に押し倒されてしまっていた。
「心配ねぇよ、優しくしてやっから」
片足を持ち上げられ、鴆の昂りが言葉とは裏腹に強引にリクオを貫く。
「あぁ、鴆くっ、ん…」
思わず想像してしまった情景をリクオは慌てて抹消する。
しかし鴆の言葉をそのまま受け止めるならばあながち間違いではないだろう。
「そ、それって…、」
夜の自分と鴆くんがしている事をするのだと期待にリクオの胸が弾む。
何しろリクオにしてみれば初めての事になるのだ。いくら夜の自分が手慣れていたとしても、この身体で受けるには多少の違いもあろう。
「わりぃな」
強引に鴆の膝の上へと跨がって向き合うように座らされる。
まさかこの体勢で初体験!?
もろに自分の体重で深く貫かれるであろう体位にリクオは躊躇してしまう。
自分から動いて鴆に気持ち良くなってもらうなんて絶対に無理な話だがリクオとて期待しない訳ではないのだ。
さぁいつでもこいと覚悟を決めたリクオの身体を鴆はぎゅうっと抱きしめる。
「ずっとこうしたかった……」
「鴆くん……」
甘く激しいひと時を待ち侘びるようにリクオが目を瞑ったその時だった。
「……鴆ってのはよ、雄が子育てする種族でよ、なんていうか小さくって丸いもんに愛着がわくというかなんというか・・・」
なでなでと、頭やら背中をまるで赤子のように撫でられてリクオの拳が怒りに震える。
「そ、そう。鴆くんにとってボクってそういう存在なんだ」
鴆の頭をガシッと掴むとリクオは勢いをつけて自分の頭を振り下ろす。つまりヘッドバットである。
「うぉっ、なにすんだリクオっ」
「それはこっちのセリフだ、バカッ」
痛む額に眉を顰める鴆の腕から逃れてリクオは叫ぶ。
「土下座してエッチさせてくださいって言っても許したげないんだからねっ」
走り去るリクオに鴆は違う意味で頭が痛くなる。
ただ単に可愛がりたいと思っただけの自分の行動がリクオの怒りを買ってしまった事に気がついてしまったのだ。
その後、土下座する鴆を見かけたとか見かけなかったとか・・・・・・。
コピー本用に書いたのですがあまりにも短くて断念しました。
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