夏の太陽



 青い空、青い海、白い砂浜。夏です。
 清十字怪奇探偵団は今、海にいます。
「フハハハ、どうだい? プライベートビーチの感想は」
 庶民には手の届かないリゾートだよ!
 などと、いつもの如く自慢気に話しているが内容の割に嫌味にならないのは彼のキャラだろう。
 雪女であるつららは夏の暑さにギブアップしてるかと思いきや、妖力を使って自分の周りの温度を下げている。
 日に焼けたくないと太陽アレルギー等という言葉を仕入れた雪女はパラソルの下で服を着こんで冷たいジュースを飲んでいる。
 初めより増えている氷には誰も気付いていないのが幸いか。
「あれ、奴良くんの背中。もしかしてキスマーク?」
 目ざとい清継の言葉にリクオは慌てて背中を隠す。
「まっまさか!む・虫だよ!虫!」
 全力で否定はしたけれど、心当たりに気が遠くなりそうだった。
 ヤツだ。あんの鳥頭のバカ鴆!! ヤツしか犯人はいない。
 旅行に行くと話したら年上のくせに大人げなく反対したあげく一晩中身体を重ねさせられたのだ。
 跡はつけるなと言っておいたのに、知性はあっても理性はないとよく言ったものだ。
「蚊かな? あっダニかも!」
 まったく悪い虫がついたものだと思う。
 結局、つららと同じく上着を着て皆が泳いでいるのを見ているだけとなったリクオの機嫌は悪くなる。
 勿論帰宅してから鴆を問い質す事となり…。
「鴆くん!キスマークあんなところに付けるなんて酷いよ!清継くんに見られたじゃないか!」
 噛みつかんばかりの剣幕で鴆を詰れば、何事ぞとばかりに彼の目が細められる。
「つまり、そこを見せたってことだな?」
 ゆらりと立ち上がった鴆にリクオも戸惑う。
 怒っているのは自分の方なのに。
「その清継とやらに脚を開いたって事だよなぁリクオ」
 声を荒げる鴆。
 どうしたらそんな理屈になるかと反論するまえに手際良く服を脱がされていた。
「な、何?」
「オレが付けたのは、脚の付け根だけだ。そこを見せたって事はてめぇ、あの人間のガキと出来てやがったな?」
「嘘っ!」
「ほうら見てみろ」
「やっ、鴆くん」
 背後に回った鴆により、ガバリと脚を広げられ、鏡代わりの窓に恥態を晒される。
 明かりを点けた夜の部屋から外は暗くて見えはしない。しかし表からは鴆によって脚を広げさせられた自分が見えているかもしれないと思うと恥ずかしくてリクオは身を捩る。
「やだ!鴆くんってば!」
「リクオがつけるなっていうから、ここだけにしてやったんだぜ?」
 鴆がリクオの双嚢を持てば確かに脚の付け根にくっきりと赤い跡が見える。
「や、皆に見えちゃうよ」
「清継ってやらに見せたんだ、別に構わねぇんだろ」
 そのガキは可愛がってくれたかい?と、意地悪く聞きながら官能を誘うように鴆の手が蠢き、続く、小さな蕾に彼の小指の先が挿入される。
「もう解れてきたぜ、リクオ」
 半分笑いながらの鴆にリクオは首を横に振る。
「嘘だっ」
 もどかしい愛撫だというのに。
 窓を見れば自分の性器が緩く持ち上がっているのが映っている。
 鴆の手は双嚢を揉みながら、小指でリクオの中を刺激し続けるが決定的な愛撫は仕掛けてこない。
「ほうら、もうリクオの尻ん穴がひくついてきたぜ?」
 この格好、窓の外で誰が見てんだろうなぁ?
「や、ぁ」
 揶揄する鴆にリクオは目を瞑る。
「穴を弄られてるだけでおっ立てやがって、リクオはとんだ淫乱ときたもんだ」
 先程から指先が掠めてくるところはリクオの内側の特に敏感な部分であり、次第に性器からはトロトロと透明の体液が滲み出す。
「濡れ衣を着せられるぐれぇなら本気で付けてやんよ。どうせ知性はあっても理性はないとか考えてたろ?」
 図星の言葉と窓の外から誰かが見ているかもしれないという羞恥にリクオは顔を赤らめて。
「で、も…背中に、ついてるって」
「あぁ? あー瘡蓋になってるから虫だろうよ」
 それをキスマークと間違えたのかと思っても、鴆によって溶け始めた思考は形を崩すだけ。
 結局、浮気をしたのだと信じている鴆に、鏡に見立てた窓に恥ずかしい姿を映されながら、鴆のモノに貫かれるという恥態を晒したリクオなのであった。


 そしてリクオの体には鴆によって付けられた跡が夏の終わりまで消える事はなかったのである。






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