注・オフ本 幽明・・・の後日談になります。紆余曲折の末に結ばれた二人の後日談とお考えください。
火事で焼け落ちた屋敷。
当初は修繕を視野にいれていたが、柱への損傷が激しく結局は建て替えとなり、本家からの支援で無事に鴆屋敷が完成してからまだ日は浅い。
ふうわりと、風が鴆の頬を掠めたかと思えば背中に重みがかかる。
「最近すっかりご無沙汰だよなぁ、鴆」
耳元で囁かれた涼やかな声は愛しい人の者で、視界に入る長い銀糸の髪に鴆の胸も自然と鼓動を早くしていた。
得物を持つとは思えないしなやかな指が悪戯に鴆の鎖骨を辿る。
着物の合わせから、ひんやりとした指が鴆の官能を引き出そうとしていたが、不慣れな指戯は鴆にとってなんら影響を与えるものではない。
リクオの御無沙汰だという言い草に鴆は端整なまでの相好に笑みを浮かべる。
「人間でいる時間が長げぇんだから仕方ねぇだろ」
まだまだ未熟な人間の子供であれば夜の意識が覚醒出来ぬ程の疲労もあり、夜のリクオも無理に出てくる事はない。
だからこうして顔を見るのは久しぶりだったのだ。但し昼のリクオはその限りではないが。
夜のリクオが鴆の耳元で囁く。
「こちとら若い身だからよ、あんまし放っておかれると身体が疼くんだがな」
それはとても魅力的な誘いではあったが鴆は大きく嘆息する。
「って、リクオ、お前今まで散々ヤってただろ」
昼過ぎに、テストが終わり明日は学校が休みだからとリクオが来て、そのまま互いの温もりを確かめ合ったのだ。
程好い疲れにリクオが転寝を始め、暫く寝かしておいてやろうとした矢先の夜のリクオである。
「あれは昼のオレ」
だから自分は欲求不満だとリクオは言いたいらしい。
「そんなあっさり言うんじゃねぇ!」
鴆にして見ればどちらもリクオなのだ。たとえ姿形は違えども、リクオに負担を強いたのも事実だというのに。
「なぁ鴆、この疼いて仕方ねぇいやらしい身体をどうしたら良いもんかねぇ」
その艶を帯びた視線で鴆を捉えたままリクオは己の腰に手をやる。
その手がゆっくりと自らの帯をほどこうとするではないか。
「こら!帯を解くな!」
「むっ…」
鴆に制止されリクオの手が止まるが何かを思い付いたのかその美貌に笑みを浮かべる。
「オレの帯もだ!」
自分の帯だけでなく鴆の帯までにまで手をかけようとしていたリクオが渋々と手を離す。
「鴆は焦らすのが好きだな」
本気で制止したのだと思わないらしいリクオの台詞に鴆は脱力感を覚えていた。
「あのなー、言いたかねぇがよ、さっきまで人間の姿でやってたよな。で、すぐにこれはねぇだろ」
鴆が本気で拒否したのだと知ってリクオの表情が険しくなっていく。
「昼日中に稚児相手に盛ってた男のセリフとは思えねぇな」
まだ明るいからと嫌がるリクオを殊更に辱しめ、散々に貪ったのだこの男は。
「そうか、鴆はあんなガキの身体が好きか」
ここに十分育ちきった身体があるというのに手を出さないとは、男じゃねぇなと不満げに呟いたかと思えばすっと鴆から離れたのだ。
「ならオレは街に出て一夜の相手でも探すとするか」
あまりにも気軽に爆弾を落とされ鴆は諦めたかのように肩を落とす。
「わかった、オレが悪かった!」
全面降伏にリクオの表情が柔らかく年相応に綻ぶ。
「そうか、じゃあ」
誘うように着物の隙間に手が差し込まれる。
細い腰を引き寄せれば、大人しく身体を預けてくるではないか。普段は何事にも捕らわれない夜のリクオだが案外寂しかったのかもしれないと鴆はリクオの美しい髪を梳く。
どちらもリクオであるからして鴆にとってはどちらも同じ。比べようは無い。そして区別しているつもりもない。
しかしリクオは二つの血どちらをも受け入れてもらいたいと望む。それも貪欲に飽くことなく。
勿論、それを叶えるのは己しかいないだろうと、鴆は指を絡ませて奪うような口付けをしながら、言葉では伝わらない想いを愛しい彼に何度も囁き続けるのだ。
リクオが望む限り何度も何度も・・・・・・
携帯のメモに書き散らかしてある話をサルベージしてきました。適当に書いてあったりするのですがこの携帯をなくすと非常にヤバイです。人としての信用というものまで無くすこと間違いなしなのです
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