繋がっていたい




 いい加減、切羽詰まっていた。まるで中高生のガキじゃあるまいし、大人の余裕で構えるべきなのに調子が狂う。そんな風に一燈は考えつつ長い髪を掻きあげる。
 ふと立ち寄ったモバイルショップ。
 目に留まったのは彼がいつも手にしているのと同じ色。
 思い付いたら即実行だった。自慢のバイクを走らせ碁盤の目のようなK都を北へと走らせる。
 幼い頃とは違ってすっかり引きこもるようになった時生はこんな天気の良い日も寺にこもっているはずだ。
 だから会いたい時にはいつでも会える。頭では解っていても身体は納得しない。いつだって会いたい、そして声を聞きたい。繋がっていたいのだ。
 寺の結界はフリーパスとは言えどそれが彼なりの愛情なのかはイマイチ解り辛くて、どちらかというと解除が面倒なだけじゃないかと思うと心が沈んだ。
 案の定テレビの前で録画してあった深夜アニメを見ている彼に、誕生日には早いけれどと言い訳して、携帯電話を投げて渡す。
「これだとデートの時便利だろ?」
「面倒です。荷物になるし、第一にデートなんかしません」
 即答した時生にキれそうになるのを一燈はぐっと堪える。
「デートなんかしてアニメ見逃したくないですからね」
 アニメは録画で見たくないんです。と、録画したアニメを見ていては説得力など皆無だが、そんな下手な言い訳をするほど時生は機嫌が悪いらしい。
「これワンセグだし。録画も可能だ」
 先日、『説教』という名の秘め事に夢中になっていて、アニメを見逃して以来時生の態度が冷たいのだ。
「知らない人から物を貰ってはいけないと言われています」
 ツンっとそっぽを向いたつれない様子がカワイイと言えばカワイイがこの年になって男に恋する一燈にはダメージが大きい。
「し、知らない人!?」
身体の隅々まで知り合った仲だというのになんて言い草だろうかと、流石に一燈もスイッチが入る。
 唐突に押し倒して、華奢な身体を弄ると小さな喘ぎ声を漏らしつつ時生の表情が艶を増す。
「へー、身体は覚えてるみたいだけど?」
 ほんの少しの意地悪。
 そして反撃。
「……やっぱり一燈さんは身体が目的なんですね」
 涙を拭う仕種に一燈は慌てふためく。
 可愛い可愛いやっと口説き落とした恋人の涙には弱い。計算された仕草と解っていても、だ。
「ちょっとでも一緒にいたいってんだよ」
 通話料だって基本使用料だって払う。だから一日一回は声を聞きたい。それだけで仕事で疲れた身体はきっと癒されるから。
 そんな必死の言葉に恋人は頬を染め、携帯を仕舞う。
「アニメの時は出ませんから」

 そう言った時生が片身離さず携帯電話を持っているのはハクタクも知らない。






やっぱ説教ってそういう事かと。寺に電話が無いのは良いとして、連絡するためだけにわざわざ寺に足を運ぶ一燈さんに、惚れてる弱みを垣間見ました。

きっと誕生日プレゼントはアニメの限定DVDBOXなんかじゃないかと。そして時生に大喜びされて幸せにひたる一燈。。。妄想がノンストップ!!



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