溶けて一つになって消えてしまえば良いのに




「その格好どうにかならねぇ?」
 上から下まで見下ろして一燈は溜息が出た。
 秋葉系ファッションとでもいうのか、はっきり言って好みじゃない。ついでに言うならダサい。
 こいつにはもっと似合うものがあるはずで。さらにはこのダサい服の下にはきっとしなやかな若木のような身体が隠れていると一燈は踏んでいる。
 たまに見える肌は、まるで誘うような滑らかさだ。その容貌も見た目だけならかなり好みなのだが、それを相殺し隠すかのようなこの服はどうだ? 
「これはプリティアイドルななちゃんのアニメの中で、ファンクラブが公式に……」
 つまりコスプレというやつか? それならもっとこう露出の高いものがあるんじゃないかと、脳が妄想という暴走を始めるのを一燈はなんとかくい止める。
「黙れっ! このオタクが」
 一燈に趣味を否定され、臍を曲げた時生がくってかかる。
「オタクで迷惑かけてません」
 ふいっと顔を背けられ、一燈もむきになっていた。
「だからー、ダサいから脱げってんの」
「嫌です」
「脱げっ!」
「嫌ですっ!」
 そんな押し問答だけでなく一燈もつい手が出てしまい……。
「ヤっ、一燈さん! どこ触るんですかっ」
「えっ?どこって…」
 いったい自分がどこを触ったのかと一燈の動きが止まる。
「一燈さんのエッチ…」
 伏せ目がちに少し頬を赤らめた姿に一燈の心臓が高速で動きだす。
 だがそれは時生の計算だったようで固まった一燈から逃げ出そうと一歩後ろに下がる。だが逃走するのを黙って許す一燈ではなかった。
「この俺から逃げ出そうとはな」
 ホント良い度胸だ。と、目が細められる様子は獲物を狙うハンターそのもの。
「うわっ」
 次の瞬間、体術では一枚上の一燈は首尾良く時生のTシャツを奪い、さらには組み敷いてさえいたのだ。
「一燈さん…」
 名を呼ばれハッと気が付いた時には、脱がされいてる途中のような時生と押し倒している一燈。二人の体勢は第三者に言い訳出来ない状況になっていた。
「……まさか、僕の身体が目的ですか?」
 透明の涙を浮かべ、顔を背けている時生の頬は赤い。決して計算ではないその表情は艶っぽく一燈の理性を奪う。
「黙れよ」
 身体だけじゃねーよ、そんな訳あるか。そんな中途半端じゃないんだと、一燈自身本当はもっと格好よく伝えたかった想いは、吸い寄せられるように触れた唇の熱さに消えた。


 そう、俺達は同じ熱に浮かされているんだ。




お互い両思いなんだけど伝えきれてない二人。 

ちょっとジャンプ読んでて時生さんの可愛さにやられました。特にチラリに(殴)



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