寄ってたかって時生を責める大人達の理不尽な声。分家ごときのさえずりと思ってもまだ15のガキが時生を守ってやる強さは皆無だった。 小さな身体を震わせて父と母、そして慕っていたであろう兄を呼ぶ時生。 惨劇の一夜が過ぎても時生の周囲はまだ嵐の中だった。終息したのは俺の力ではなかったと一燈は振り返る。 時生が、必ずヨーマを飼い慣らし天魔波旬を倒すと宣言し、理不尽な声を封じたのだ。あの小さかった時生が。 あれから呼び名が変わった。親しみを込め兄と呼んだ舌足らずな口は一燈さんと大人びた口調で、丁寧な言葉を選ぶ。画されたのだ。時生の世界から放り出されたと気がついた のは半年の修行の後。 まるで別人のようになった時生。もう無邪気に、寺の庭を、池を走り回る事もない。 まっすぐに顔をあげ、遠くを見つめる瞳は凛と決意を秘める。 あの時のようにお前の笑顔を見られるのなら俺はなんでもしよう。共に闘う仲間の範囲を越える事なくお前を支え続けよう。 だが波旬を、時人を倒したとしても、お前はきっと憐憫の涙を流すだけで昔のような笑顔を見せはしないのだろう。 時生、お前自身を望む事はしない。しかしもう一度、お前の笑顔を望むぐらいは許してくれるだろう? 拍手のログです。 |