君ヲ慕ウ
僕が初めて一燈さんに抱かれたのは、志村の当主になって初めてヨーマを倒した夜だった。
結ばれるはずもないのに。
彼には恋人がいて、僕の事など視界にも入っていないと知っていたのに。
醜い感情を抑え切れず、僕はその身を委ねた。
愛しているとは言えず、愛してくれとも言えず。
ただ刹那の関係、身体だけの虚しい関係……。
いつか終わらせるのだと、己に言い聞かせて。
それがいつなのか解らなかったけれど、彼が僕だけのものにならない事だけは解っていたから。
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