僕の弱みは貴方を好きになったこと




 営業時間もやや過ぎた店内。早番だったという光樹が、時間をずらせて蕎麦を食べに来た時生に切々と訴えてくる。
「聞いてください!若ってば口でしろって言うんですよ」
 時生さんは口で出来ます? 泣きつく光樹に当たり前じゃないかと思いつつ、
「そんな一燈さんが?」
 僕以外とも関係があるなんてと時生の顔色が変わる。
「口でなんか絶対無理、出来ないっす!」
 汚い!不衛生だ!と力説する光樹は涙目だ。
「無理矢理口に突っ込んできて俺……。でも若の命令は絶対だし、第一この命も身体も若のものだから…」
 大きな瞳を潤ませる光樹に時生の想像が膨らむ。


『嫌です! いくら若の命令でもそれだけは。第一、若には時生さんが』
『ああ? 時生なんて関係ねー。ほらさっさとご奉仕しろよ』
『いや! 若! うぅっ』


 嫌な想像に時生の瞳も潤んでくる。
 そんな時生を前に、でも普通は出来ませんよね?と光樹は同意を求めてくる。 だが時生にしてみれば違う。
「一燈さんだってしてくれるし、喜んでくれるから、たまにはしますけど」
 口でするぐらい恋人なら当たり前だ。問題は出来る出来ないじゃない。
 お前だけだと言った彼が二股をかけていた事が判ったのだ。時生の身体が怒りで震える。
 そんな一触即発の空気の中、店の奥から出てきた一燈は時生の射るような視線に一歩下がる。
 そして、犯人が来たとばかりに時生は一燈に詰め寄った。
「一燈さんっ!どういうつもりですか!」
「なんだ、いきなり?」
「僕以外にも手を出していたなんて!」
「あぁ?」
「七尾くんにも口でさせていただなんて信じられません!」
「ちょっ、なんの事だ?」
「七尾くんが、一燈さんが無理矢理に口に突っ込んできたって!」
 珍しく取り乱す時生にまだ話は見えないが、原因は自分じゃないのは解る。つまり……。
「七尾っ!」
「だって若がサクランボの茎を口の中で結んでみろって! キスの練習だなんてやらしいっす!」
 悪戯がバレたと悟った光樹はもう物陰だ。
「だから誤解招くような省略をするんじゃねぇ!」
 一燈の怒鳴り声に、連想するような事してる方が悪いっすと、遠くから聞こえた光樹の声に時生が気まずそうに視線をそらす。
「……サクランボ、でしたか」
 なんて誤解をしてしまったのだろうと、まさしく穴があったら入りたい気分だった。
「ったく! なんだと思ってたんだよ」
「言え…、ません」
 早とちりしたと気付けば恥ずかしさが増す。例のアノ事と間違えただなんて言えるはずもなく……。
「時生がヤキモチだなんてな」
 よほど嬉しいのか一燈は相好を崩している。
「すみません」
「説教だかんな。それともお仕置きがいいか?」
 今日は口でしてくれるんだよな、勿論。
 そんな一燈の言葉に時生も頷く。
「目隠しでもコスプレでも何でも……」
 今日はどんなプレイにも応じる覚悟は出来ていると言う時生に、滅多に無いチャンス到来と、一燈が戸惑う番だった。
「じゃ、じゃあセーラー服で…」
「へー、一燈さんそっち系でしたか…」
 一燈の言葉に時生の表情が固まり、二人の間に今までにない空気が漂うのであった。



 時生がセーラー服を着たか着ないかはまた別の話……。





相変わらず、下品なネタですみません。書いてる本人はいたって清廉潔白なレディーで す。
嘘ですorz



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