天ノ川越えて会いに行こう




 仕事の休憩に情報収集と誤魔化して愛車に跨がる。
 玄武寺まではさほど遠くはないが可愛い可愛い年下の恋人を思うとその距離は天ノ川さながらの一燈であった。
 ハーレーから降りて今日はなんの用事にしようかと考えていると門が開き女が出てくる。そして再び門に結界を張り颯爽とした足取りで去っていく。
 背の高いスタイルの良い女だった。30後半から40代の油の乗った、祇園に店でも構えてそうな女だ。
 させ頃し頃というように熟した果実を連想させる。
 だがどんな女よりも時生が一番だと一燈は門を開けた。
 部屋へ通されるなり徳田が飲み物を運び形良く切られた季節の果物が机に並べられた。
 途中で見た式神は皆同じような女だ。25前後ぐらいの落ち着きを見せる。それに比べ先程の女は毛色が違うと時生を待つ間、庭を眺めつつ疑問を反芻する。
 あんな式神がいただろうか?
 やっと姿を現した時生に、来客でもあったかと尋ねるが答えは否。
 さっき見た女の事を話すと時生は納得の笑みを見せた。
「あれはハクタクですよ」
 ヨーマとして志村に仕えているだけではなく、六年前から未成年である時生にかわり諸事をこなすのだという。
「気になってたんだけどよ」
 抜けがら寺と呼ばれていても、K都市民としての生活する何かしらの資本があるはずで、またハクタクが免許証を持っているのだとしたらやはり人間としての証を手に入れてあるはずだ。
「檀家との付き合いはないわな?」
 所謂、寺として機能していなければ生活する資力は皆無なはずだ。
 ではどうやって?
 ハクタクが仕事をしているのかもしれないが可能性は低い。
「さぁ詳しい事は知りませんが」
 すべてハクタクが仕切っているとなると、代理人としてもしくは後見人としてハクタク自身の戸籍が捏造されていると推測されるが、まだ子供の時生は知らないだろう。
「確か…、スワ…、スワップとかなんとか」
 スワッ、プ? スワッピングの事かっ?
 なんてアダルトな用語が出てくるんだと一燈は目を見開く。
「お・お前もそれを知ってんのか?」
「あっ・当たり前です」
「さ、さすがに犯罪じゃね?」
 パートナーを交換してのセックスを時生も経験済というのか?
 まだ16になったばかりの時生がそんな中に放り込まれたら餌食になるに決まっている。俺の知らないところでまさか時生が汚されていただなんて。


『嫌だ、ハクタク…そんな僕には一燈さんが』
『我慢なさいませ。皆、若い身体に飢えているのです。時生様なら女でも男でもいけるクチでしょう?』
『あっ、そんなとこ…』


 そんなとこはどんなとこだっ!一燈の怒りが頂点に達したところにハクタクが戻ってくる。
「スワップです。スワッピングではございませぬ」
 心なしかハクタクの手が怒りで震えている。
「お二方ともそこへお座りなさいませ」
 守護家の当主として、社会人として、これぐらいの知識がなくてどうなさいますか!常識でございます。 そう切り出したハクタクの目を盗み一燈は時生に話しかける。
「おい時生どうして俺まで」
「我慢してください。何かハクタクの逆鱗に触れたんです」
  ちくちくと守護家のあり方について語るハクタクが一燈を睨む(ように詰め寄る)。
「特に一燈様、時生様にいかがわしい事を教えるのはおよしください」
 やっぱそっちか!
 教えるよりいかがわしい事をしたいと考える一燈をメインに、説教は延々と続けられるのであった。




正確にはスワップポイントです。ハクタなら資産運用とかしてそう・・・。なんて妄想。きっと素顔は美人で、初代とのロマンスがあったんじゃないかと。生まれ変わりを待つとか、けなげなハクタクの妄想もしてみたり。



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