おめでとうって本当ですか?




「ココって最近、お腹出てきたんじゃない?」
 もしかして中年太り? と、天然少女ののぞみの発言にココは冷汗を流す。
「そ、そうなのかな?」
 他人に言われなくとも実は自覚のあったココである。小々田の姿でもココの姿でも身体が重いと感じ始めていたのだ。
「それって……。おめでとうココ。元気な子供を産んでくださいね」
 天然2号のうららが、やはり爆弾発言を投下してココの顔色が真っ青になる。
「えっまさか、僕が妊娠? でもナッツはそんな事一言も言わなかったのに」
 太った原因が思い当らなくて、うららのセリフに思い当る節のあるココは可哀相なぐらい動揺していた。
「避妊……していたのかしら?」
 性教育は大切な事よ。習ったでしょう? そして望まない妊娠を避けるためにも……、なとど生徒会長の役職通りのかれん言葉にココは頬を赤く染める。
「いや、それらしき事は……」
 身体の奥にナッツの熱い迸りを受け止める感覚を思い出し、あれだけ毎晩のように交わっていれば子供ぐらい簡単に出来るだろうと肩を落とす。
「異様な甘党だと思ってたけど、なるほどねー」
 りんが言うには妊娠すると甘い物がほしくなるらしい。酸っぱいものが欲しくなる人もいるとこまちのフォローだったがこの際あまり関係はない。
「そう、だったのか。でも最近は胃の辺りがムカムカしててあまり甘い物も食べたくないというか……」
「それって悪阻かしら?」
「悪阻があるとお腹の子供は元気って祖母が言っていた気がするわ」
「ナッツに責任とってもらいなよ」
「カワイイ子供産んでくださいね」
「生まれてくる子供のためにも早くパルミエを復活させなくっちゃね、けってーい」
 口々にお祝いやら決意やらを述べる少女達に見送られ、ココは帰路をお腹を庇いつつ歩く。気分は既に『母』のココである。






 そして。
 帰宅して自分とは対照的に呑気に見えるナッツにココは先程の事をまくしたてる。
「僕が妊娠してるって、皆が! 思い当る事だってしてるし……」
 もう僕一人の身体じゃないと言うココにナッツは呆れたように嘆息した。
「本当にバカだな。あいつらに担がれたんだ。どうやったらお前が妊娠するんだ?」
 むしろ教えてもらいたいところだ、そう言ったナッツにココの怒りが爆発する。
「だってナッツが避妊しないから。毎晩僕の上でしつこく腰振っといてヒドイよ。いいよ! 僕一人でも育てるからっ!」
「ココだって人の上に跨がって自分から腰を振ってただろうが。ってそうじゃない、全くどこでそんな言葉覚えてくるんだ。……ともかく心配せずともココは立派な男性体で絶対に妊娠なんかしない」
 断言したナッツの言葉に、彼が言うならそうなのかもとココも怒りを沈めるがまだまだ疑問は残る。なにしろぽっこりと出てきた下腹の膨らみが気になるのだ。
「……やたらと甘い物が食べたくなるのは妊娠したからだって」
「妊娠により嗜好の偏りがあるらしいが、お前の甘党は生来からだ」
「おまけに最近胃がムカムカするし、こまちが悪阻だと」
「昨夜、シュークリームを食べた後、口直しに煎餅を食べて、やはりシュークリームだと言っていつもの三倍は食べていたな。あれだけ食べれば胃ももたれる」
 思い当る節の原因を悉く言いあてられ、ココはやっと少女達に騙されたのだと気付く。すべては誤解と錯覚だったのだ。
 そして子供を宿していなかった事に対する安堵とほんの少しの寂寥感……。
「つまり、その腹は単なる食べ過ぎによる脂肪の蓄積で、ココが太ってきたという事だ。決して妊娠ではない」
「なんだー、そうか。安心した」
「安心するなっ、お前、俺達の関係ばらしてきただろう?」
 やっといつもの笑顔になったココに肝心な事を忘れているだろう? とナッツが詰め寄るがココは『任せとけ!』とばかりにナッツの肩を叩く。
「心配性だなーナッツも。僕は一言もナッツとSEXしてるなんて言ってないから」
 笑顔で『安心したらお腹すいてきたなー』なんてほざく口に豆大福でもつっこんでやりたくなる。
『妊娠したと言われて動揺した挙げ句、相手の名前を出した時点でアウトだろう』
 そんなナッツの怒りがココに伝わるすべはないのであった。







ココが太りやすいという公式?設定より。よくあるネタで被ってたらすみません。



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