時よ、止まれ




 なんていう起こされ方だと光は一人憤慨する。
 前髪を引っ張られて目を覚ましたのは良いが、その引っ張った相手はまだ夢の中だったのだ。
 双子の弟の馨。
 同じ性、同じ顔、同じ身長と体重、同じ髪と瞳の色。驚異のシンメトリー。
 違うところを探すのは難しいようで簡単だ。
 光は馨の手をそっと握る。
 例えば馨の方が少し手首が細い。
 内股のあんなところにホクロがあるなんて、こんな関係になって初めて知った。
 しなやかな身体。抱き締めた時に一瞬見せる表情。色っぽい顔をするようになったのは自分のせいかもしれないと光は小さな笑みを漏らす。
 他人には同じに見えているかもしれないけれど馨は光にとってまったく別個のものだ。
 だからこそ愛おしい。
 裸で眠る彼に昨夜と同じように覆い被さる。密着した肌と肌。そんな光の行動に眠り続ける事など出来ず馨は覚醒する。
「おはよう馨」
 目が覚めた恋人に光はいつものようにキスをした。何度も何度もキスをした。
「んー、何? 朝から元気じゃん」
 キスだけではない。下腹部に当たる屹立に、求められている事を知って馨が苦笑する。
「ちょっと光、朝からなんて勘弁してよ」
「ダーメ、馨の寝顔見てたら欲情してきちゃった」
 理性で制御出来ない部分が馨を求めている。
 その激しさに光は戸惑いながらも流される。
 こんなにも馨が愛おしい。
 すべてを強引なまでに奪い、荒らし、そして慈しみたい。
 矛盾する感覚の中、光は馨に押し止められていた。
「これだけで我慢しなよ、今日テストの初日なんだから」
 遅れたくないと言いたかったのか馨の言葉は光へのキスで消える。



 行動は少しどころではない。かなり違う。
 自分よりも理性的な馨。常識人な馨。
 きっと彼から別れを告げられる。そう思うと光は今この瞬間だけを生きていたかった。


 心の中で呟く。
『時よ、止まれ』






「ココは僕の方が大きいよねv」なんて馨に言われて凹む光を書きたかったんですが、自分が変態な気がしてやめました。で、悔しくって一週間我慢して再チャレンジする光とか・・・。あはは、脳内妄想が止まりませんorz



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