天国への片道切符
成長するにしたがって、双子の僕達も別々に行動するようになった。離れていても大丈夫な距離が解るようになってきたのだろう。 長い夏休みの間、馨は日本に残って心酔しているらしい教授の特別講義を受けると心踊らせていた。 僕はと言うと跡取りとして常陸院グループを把握しておけとかなんとかうるさく言われ泣く泣く国外へ強制連行。 そして、久しぶりに帰国した僕を待っていたのは、馨の謝罪の言葉だった。 目の前で謝る馨に僕は不機嫌をこれでもかと曝け出す。 「ホントひどい話だよね」 僕がたった二週間、父親の仕事に同行してイギリスへ行ってた間に馨のヤツ! なんて裏切りだろうか。 こんなにも僕は馨の事を想っているのに、ありえない。 「だって光がいない二週間なんて何しててイイか解んないもの」 無意識にだろうが、上目遣いで『許してよ』と口にする馨はまさに小悪魔そのもの。途端に心臓は動きを早めていて……。 そしてとどめの一言。 「……光がいなくて淋しかった」 カワイイ事を! と、抱き締めたいところだったが、いくら二週間暇だからと言って、合宿までして車の免許を取っていたなんてひどい裏切りじゃないか! そう僕は思い止まる。 どうせなら、二人で教習所に通うってのが良かったのにと、考えれば考えるほど落ち込でしまっていて。 確か、二週間弱で取れるのだと話題になったのは一ヵ月ぐらい前の事なのにと思うと馨の裏切りが悔しかった。 しかし……。 この常陸院の御曹司が庶民に交じって合宿だって? 今更ながら、そんないかがわしいところに馨を放置していたかと思うと寒気がした。 だが馨は僕の憤りを『先に免許取るなんてひどい!』のだと誤解しているらしく、しおらしげに機嫌を取りにくる。 「僕が光に教えてあげるよ、実技もネ」 光ならすぐに取れると思うよ。そう口にする馨がますます憎らしい。 「どうせなら別の事の方が教えてもらいたいけどね」 車に乗るより馨に乗りたいに決まっていて。教えてほしいのは馨の身体だなんて言いたかったが、さすがに言い出せなかった。 「んっ? 何、光くん?」 にっこりと笑う馨の笑顔は年々誰かに似てきたのは気のせいとは思えない迫力がある。 馨と僕は双子の兄弟で恋人同士……。と、言いたいが実はまだまだ清い間柄。 いつか一線を越えるだろうとずるずるきて、そしてずるずる年を重ねてしまうのかと不安満載な今日この頃だったりする。 そして馨を助手席に乗せての運転。公道でないので誰にも文句は言わせない。 エンジンをかけてゆっくりと走りだす。 「そうそうカーブはスローイン、ファーストアウトでね」 ふむふむ、カーブはスローイン、ファーストアウトね。でもどうせならベッドで、馨にスローイン、馨からファーストアウトでなかせてみたいなーなんて。 そんな僕の脳裏では馨がその白い身体を艶かしく開いている。 ゆっくりと捩じ込むと馨が悶え、快楽を引き出すように腰を引けば馨は締め付けてくるに違いなくて……。 『やぁ、ひかっ、そんな……抜いちゃダメ。もう、焦らさない、でよ……』 涙目でしがみ付いてくる馨。そしてそんな馨へとさらに腰を動かす僕……。 なんて理想的!! ドンッ 鈍い音と共に車は急停止。そう僕は馨に突っ込むより、丁寧に剪定されている生け垣に突っ込んでいたのだ……。 「光、何考えてたか当てたげようか?」 にーっこりと微笑む馨を傍らに、前かがみになって動けないでいる僕。 そんな僕が運転免許を取得する日はまだ遠い……。 大学生設定です〜。何学部とかそんな細かい事は考えられないお粗末な頭ですorz っていうか、アンタ達大学生になっても一線越えてないのかよっ!!とそっちが気になったり。 |