メリー・クリスマス




 クリスマスツリーの飾り付けは毎年僕らの役目だ。庭から今年で一番良い枝振りに生育した樅の木を切らせる。そのために植林されてある、クリスマスツリーになるためだけの木。
 テーマを決めて飾り付けする年もあれば、思い思いに飾り付けする年もあり、僕らは感性のままにツリーを着飾らせる。
 出来が良い年は母親が誉めてくれたので、気を良くして飾り付けしていたのはもっと幼い頃だ。今は単なるイベントだったが、二人で取り組む事に楽しくない事などない。
 去年は和風クリスマスと題して竹やら南天など装飾に組み込んだものの、はっきり言って異色すぎての失敗だったように思う。
 反省した訳ではないが、今年は何のテーマも決めずに今までの飾りから適当に飾っていた。
「馨、馨。ほら、宿り木ー」
 こっちへおいでと手招きする光。その下でキスしようとする魂胆が丸見えで馨は笑みを洩らす。
「ダメだよ。今年のプレゼントは僕って言ったけど、それまではお預けにするから」
「ちぇーっ」
 そう、僕達は男同士の双子の兄弟だったけれど、今年のクリスマスには一つになろうって約束をした恋人同士でもあるのだ。
 光は何やら不平を口にしていたが、諦めて飾り付けに戻る。その手元には手作りであろう装飾品。
 クリスマスカラーの袋達は可愛らしくリボンで結ばれていて中には何かが入っているように見える。そして、袋には数字が書かれていて、それがアドベントカレンダーだと馨は気が付いた。
「それ、何入れたの?」
 普通ならお菓子か何かだろうが、光からは意外な答えが帰ってくる。
「じゃーん、今日のを開けると最高級品のティッシュボックスが入ってマース。一枚一枚、プロの職人が和紙と同じ工程で作ったものネ。そして明日は超薄ゴム。明後日はローション。明々後日はハウツー本。その他も役に立つグッズが満載。勿論、当日は栄養ドリンクね」
 光曰く、クリスマス当日までにはセックスを楽しむための物が一式揃うらしい。
「まったく……」
 そのおバカさに脱力しつつもクリスマス当日まで我慢するという光が愛しかった。
 いつも同じベッドで半裸同然で眠っていてチャンスはいくらでもあるし、片割れが決して嫌がっていないというのも解っているだろうに……。
「本当、バカなんだから」


「はい、馨。メリークリスマス」
 深夜になって25日の表示に変わったデジタル時計。先程から降り始めた雪はもう庭を白く染め上げている。
 ホワイトクリスマスなんてロマンティックだという光の言葉に思わず笑ってしまう。
 はい。と、手渡されたプレゼントは予めリクエストしていた携帯のストラップだ。
 光が宝飾メーカーにルースから選んで作らせたと言っていただけあって、本物の石の輝きは携帯のストラップにしておくのは勿体ないような出来栄えだった。
「これは、ダイアモンド、エメラルド、アメジスト、ルビー……トルマリン……」
 石を順に並べると、そこには光のメッセージが込められていた。
「光……」
「ちょっとキザかなって思ったんだけど」
 照れ臭そうな光に抱きつく。


 石の頭文字を順に並べればディアレスト、最愛の人となる。愛されているのは知っていたが、光の心憎いまでの演出に馨は涙が出そうだった。



「「メリークリスマス」」
 そして僕らは神聖な誓いのキスをする……。








少し早いですが、クリスマスです。恋人同士のイベントってカンジで光と馨がいつまでもラヴラヴであってほしいと願いを込めて。

って締め切り前に現実逃避です・・・orz



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