ボクだけの……





 美術の時間に使っているクロッキー帳。そのどのページにも光がいる。
 僕だけの光がいる。

 カウチで寝そべる光。必死に何を見ているのか……。

「ねぇ、光。モデルになってよ」
「イイよ、ヌードならね」
「じゃ、脱いでよ。って違うでショ、『以外』が抜けてますから」
 そうやって人を揶揄するのは勘弁してよ。

「ほらほら〜」
 なんて言いながら光はシャツのボタンを開けてみせる。

 バカ。
 そんなに人を挑発してると寝込み襲っちゃうからね。
 ホントにホントだよ。

「そうだ、光。何を必死に見てたのさ?」
「んー、携帯。ハルヒにさ、持たそうと思って」

 ズキンとした胸の痛みに唇を噛む。

 そうやって光は世界を広げていくんだね。
「登録者以外からの着信は拒否にしてー、発信も制限!」
 嬉しそうな顔を見ると、僕はとても苦しい。
 無邪気な笑顔で僕の心に突きつけられる言葉のナイフ。

 傷ついて傷ついて…。

 心が張り裂ける前に、そのナイフで一思いに心の臓を抉り出してよ。
 そうすればもう傷つかないのに。

 僕は光に殺されるなら本望だよ?





 でも……。
 でも、本当の望みは?


 答えは出ているけれど答案用紙には書き込まない。
 だから誰にも解らない。
 ずっと僕の心の中へ、獣と一緒に封じ込める。


 僕だけの光はクロッキー帳の中。
 そして君は飛び立てば良いんだ。


 僕を残して……。









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