二人だけのパーティー




 ずっと約束していた。
 16才の誕生日を迎えても今の気持ちに変わりがなかったなら……。


 お互いだけが大事だという気持ちに変わりがなかったら一つになろうって。


 今夜は二人きりだった。
 大人の都合で誕生日のパーティーは明日の土曜だ。来賓を含め百人規模というからそう大した事はない。
 しかし、華道家の後継ぎであるべくして生まれた僕達にかける周囲の期待は大きかった。
 だがそんな大人の思惑など関係ない。


 僕達は16才になったらお互いのものになるって決めていたのだから。


 ずっと二人きりだったからか。
 それとも、前世からの因縁なのか。
 よりによって恋をした相手が自分の兄弟だなんて冗談にしても質が悪い。しかし僕達には互いしか見えてなくて。
 それでも祝福されざる事であると理解していたから、16才になっても心変わりがなければ結ばれようと決めたのだ。


 よく我慢したものだと光は思う。年頃の男子にとって意中の人物が毎日一緒なのに禁欲生活を送らなければならないのは辛いものがあった。
 今思えばなんてバカな約束をしたのだろうかと過去の自分に回し蹴りしたかったが、待つ期間も悪くなかったとも思う。
 会えない時間が愛を育てるというが、手を出したくても出せない間もまぁ良かったんじゃないかと今になって思えるのだ。


 部屋の照明を落とす。
 シャワーを浴びたところなので寝着の上は着ていない。
 ベッドの上で無言で顔を見合わせて緊張しながらもタイミングを計る。『結ばれる』という行為は平たく言うとエッチの事だ。
 どちらが言い出したかは定かでなかったが、性の目覚めは互いに対してだったと記憶している。
 究極のナルシストだと言われそうだが、どんなにそっくりでも自分にとって彼は全く違う存在で、恋とか愛とかは禁忌だからといって制御できる類のものではない。


「馨、脱ぎなよ」
「光こそ」
 裸なんて見慣れているはずなのに、これからの行為を想像すると恥ずかしくて視線を合わせられないまま、二人揃って生まれた時と同じ姿へと戻る。
 ここはやはり年長者の自分がリードすべきだろうと思った光が馨の肩に手を置くがそれをやんわりと止められた。 
「あのさ、光はどうするか知ってるんだよね」
 不安そうな馨に光は頷く。
「勿論」
 この日のために勉強したのだ。勿論机上ではあるけれど……。
「馨は?」
「知ってる」
 速答した馨の言いたい事は大体解る。真剣な眼差しは、どっちがどっちをするの? と言いたげであった。


 やっぱり問題はそこに帰着するのだろう。男として生まれたからには受け身というのは遠慮したい。
 特に対等な立場の場合、攻受に困る。モリ先輩とハニー先輩は見たまんまだし、鏡夜先輩と殿でも解りやすい。
 いつもの部活動での演技では兄×弟だったけれど実生活では上下関係などない。


「ジャンケンして決めよう」
「イヤだ。馨は黙って任せとけばイイの。弟だろ」
 馨の提案を却下してその肩を強く押すが、そう簡単に押し倒せるはずもなく……。馨の抵抗に強引に事を進める事を諦める。
「馨は僕の事キライになった?」
 泣き落としに出てみるが馨の表情は変わらない。


「……だって痛いんだよ? 痛いのも痛くさせるのも嫌じゃない?」
 あんなところにあんなのが入って動く訳だから痛いに決まっている。
 楽しい事や気持ち良い事は大好きだけど痛いのを我慢出来るほど出来た人間じゃないのはよく解っていた。
「確かに……」
 自分だけが気持ち良いってのは不公平だ。大好きな馨が痛いと楽しくなんかない。かと言って自分が痛みに耐えるというのも嫌だった。


 結構自分達は我侭に出来ているんだなぁと黙り込んでしまって次の瞬間には吹き出していた。
「なんだよー。もう二人揃ってヘタれだよなー」
 互いに対しての感情が肉欲に支配されているものではないからこその葛藤。エッチしたって今以上に深くなれる訳ではないのだ。
「でも馨の事好きなのは本当だし」
 触れたいと思うのはごく自然な欲求だったし、もっと深いスキンシップだってしてみたい。けれど馨の表情が痛みに歪む事はしたくないのだ。


「じゃあさ、気持ちイイ事だけにしよっか」
 馨に誘われるままベッドの中で、腕を、足を絡ませる。
 腰に手を回して、頬にキスして、余す所なくその身体に触れていく。
 こうしているだけでも気持ちが良い。高揚した気分。


 これは心が気持ち良いのだと光自身気が付く。


「また来年、な?」
 馨の提案に光は頷く。
 今はまだこれだけで満足だったから。




 いつか抑えきれない衝動に理性を失う日がくるのかもしれないけれど……。






次の瞬間には理性なんかぶっ飛んでる光に一票。
なにげにプラトニックもえ。この馨は誘い受けかな。いや襲われ受けでも良いし、光だってヘタレ攻めでも俺様攻めでも(そんな言葉があるかどうか不明ですが)リバでも何でも双子であるだけで、ワタクシ何杯でもご飯いただけますわー(れんげちゃん風に)

嗚呼、裏バージョン書きたい……



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