甘い夜の夢 後編





「ごめん、ごめん……馨、こんなつもりじゃなかっ」
 後から後から涙が零れる。
 あぁ、僕はなんて事をしてしまったのだろう。
 馨の足の付け根には僕の欲望の印と馨の血液がべったりとこびりついている。
 失神してしまったらしい馨に、僕は何回も何回も謝り続けていた。


 痛みで萎縮してしまっている『馨』を無理矢理に扱いて絶頂を促し、弛緩した隙に有無を言わせずに捩じ込んだ欲望。
 馨の痛みによる叫びが耳の奥にこびり付いている。


 どうして途中で止められなかったのだろう。
 どうして……。
 どうして馨にこんな欲望を覚えてしまったのだろう。


「ごめん、馨。でも僕は馨が好きなんだ」
 どうしようもないぐらいの好き。理性じゃ制御できないぐらいの好き。
 大切にしたかったのに、痛みで苦しめたくなんてなかったのに。
 結果的に何回しただろう。
 確か一回目は予想どおりすごく早くて、数回挿出入を繰り返しただけで欲望を吐き出してしまい、それを隠すかのように……、滑りが良くなったのを良い事に腰を動かしていた。
 まるで動物のように馨を背後から貫いて……。
 痛みに苦しむ顔を見れば、もしくは裏切りに苦しむ顔を見れば萎えてしまうだろうからという理由での後背位。
 あれは、セックスなんてものじゃなくてまさしく強姦だった。


「馨……」
 本当にどうしよう……。
 このままにはしておけない。
 気の失ってしまった馨をこのまま放置なんてすれば後からどんな制裁があるか。それこそ逆に寝込みを襲われる可能性も否定できない。
 おろおろとしていると、馨が目を覚ましたらしい。
「光……、どういうつもり?」
「ごっごめん! その出来心で! もうしませんごめんなさい許してください」
「出来心?」
「そう、出来心! もう絶対にしません、許してください!」
「単なる出来心で弟を……。男を抱けちゃうんだ、光は……」

 そう呟いた馨の瞳には……涙?
 見間違いだろうか。
 ヨロヨロとバスルームに消えた馨を見送る。もっと怒鳴られるかと思っていたのに拍子抜けで……。
 意外な馨の行動に茫然としていたが、バスルームがあまりにも静かで恐くなってくる。
 まさか、兄に犯されたショックで自害とかしてないだろうか?
 嫌な予感がして慌ててバスルームに乱入すると……。

「泣いてる、の?」
「バカ光っ! こんなにもいっぱい出してっ! おまけに切れてるから痛くて出せないじゃん!!」
 痛みからだろうか。泣きながら後に指を入れて、広げて出そうとしている姿に不覚にもまた欲望を刺激され……。
 そそりたつモノに馨の視線が注がれる。
「それ、ナニ? それでよく出来心だとか、もうしないとか言えるね」
「だって馨が好きだから、家族とかじゃなくって。男として抱きたいと思うぐらい馨が好きだから」
 言ってしまってから気持ち悪がられないかと様子を伺う。
 すると、
「まぁ、及第点としますか」
 はぁ……と、ため息を吐いた馨が、
「いいよ、それで許してあげるよ。次は傷が治ってからなのと、ちゃんと慣らしてから挿れてよね」
 と、言うではないか。
「えっ? それってどういう事?」
 次って? 慣らすって?
 疑問を口にした瞬間、馨の表情が一変する。
「こっ……、このバカァッッっっ! あっちに行けぇぇ!!」
 ボディーシャンプーのボトルを投げ付けられ、慌てて避難する。
 もしかして、もしかして……。
 そういう事なの???
 もしかして、自分達って両想いだったの?
 そんな期待に胸も膨らんでいたが、もちろんナニも期待に膨らんでいた事は言うまでもない……。





「おめでとう、馨」
「まだ何も言ってないけど?」
「確かに馨は言ってないけど、今日はすごく辛そうだし、何よりも光があの状態だからね」
 一目瞭然だね。と言うハルヒに馨の頬が染まる。
 確かに光、顔がにやけている。それはもう気持ちが悪いぐらいに。
「で、どうだったの?」
「あの、ハルヒ? 女の子がそんな事聞くもんじゃないと思うよ?」
「ふーん、馨の恋を応援している友達にそういう口をききますか」
「だって、案外良かったとか幸せvとか、言ったのがバレたら光の奴、図に乗りそうだし」
「馨、顔赤いよ。それとさっき環先輩が、辛いだろうけれどガニ股で歩くなって」
 あっ鏡夜先輩も今日は部活休んだ方が良いって。それとハニー先輩とモリ先輩がおめでとう、でしょ。あと、れんげちゃんが是非インタビューさせてーって、すごい事になってた。



 一気に言い終えたハルヒに、どうして皆に知られているのだろうかと、馨の顔色が赤から青に変わったのは言うまでもない。





お付き合いくださりありがとうございました。軽ーいノリの光馨でした〜。今月の前半は手直しとか書き下ろしとかで、それはもうシリアスというか(閨のシーンの書きすぎで)恥ずかしいのを書いてたのでその反動で明るく軽くラブコメを書きたくて、今まで妄想してたのを一気に仕上ました。全部短編の読み切りのはずだったのに二人の仲が頭の中で勝手に進展していくのです。という事で苦し紛れにつけたタイトルがだらだらと並んでまさしく自分的に羞恥プレイなんですが、こんなヘタレた光と誘い受けな馨を少しでも楽しんでもらえたなら嬉しいです。ちなみに前編と後編の間は書きませんので・・・(恥ずかしいので頭の中にしまっときます)




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