秋の夜の夢





 ハルヒが網を切っている。目の前にハルヒがいる事よりも何よりも、馨がいなくなった事に焦る。
 ったく、さっさとしろって。馨を追い掛けなきゃならないんだから!
 他の男と馨を二人きりになんてさせられるかよ。
 それでなくても、『二人一組なら光とハルヒ。僕は委員長と組んだのに』なんてあっさり言ってた馨。
 まさか……。
 馨の奴、委員長と浮気してんじゃないか? って別に僕達の間にだって何も無いというか僕の一方通行なんだけど。
 けど馨は委員長の事を好きだって思ってたら?
 その証拠に委員長を追い掛けて行ってしまったし……。
 今頃、委員長と何をしてるんだろう。まさかナニか?
 どこかの教室にしけこんで、あーんな事やこーんな事してんじゃないかと思うと殺意すらわいてくる。


『ねぇ、委員長。倉鹿野姫の事なんか忘れて。僕と楽しも? それにずっと二人きりになりたかったんだ。僕のカ・ラ・ダ試してみてよ』
 とか言って馨が誘っていたらどうしよう。
『腰抜けちゃった? そんなに僕の身体良かったんだ?』
 なんて、もうヤっちゃってるとか?
 いや、待てよ、馨はそんな奴じゃない。馨と結ばれるのはこの僕だ。
 けれども。
『やめてよ、委員長! 僕には光って心に決めた人が! あっ、ダメ、そこは……』
 想像の中の馨は抵抗も虚しく最後の一線を奪われてしまって……。


 覚えていろ! 委員長! よくも馨を連れて行きやがってっ!
 待ってろ! 馨! 今すぐ助けにいくからっ!!
 ほらっハルヒ早くしろって! 早くしないと、もう馨が脱がされているかもしれないじゃないか! それどころか、味見されてるかもしれない。
『ゴメン、光。僕の身体は汚れちゃったんだ。でも、心はずっと光だけのものだよ?』
 そんな健気な事を言わせて良いのかっ? いや良くないっ!
 あぁ、ほらっ、なんか幻聴まで聞こえてくるじゃないか。
『光。2−Cの教室で……、委員長が無理矢理……』
 やっぱり! 
 ちくしょう、羨ましい! じゃない。待ってろ、馨!!



 全速力で走り扉を開けた僕が見たのは、僕に助けを求める馨だった。僕の名を呼びしがみ付いてくる馨。
 よし、衣服は乱れていないな。と確認して一息つく。
 良かった。委員長に襲われていたらと気が気でなかったのだ。
 もし次にこんな手口で馨と二人っきりになろうとしたらただじゃおかないからなと睨みつけると委員長は恐いものを見たかのように失神した。
「光、ハルヒは?」
「いや、だって馨が犯されてたらって思うと……」
「へぇ、僕の事そんな風に見てたんだぁ」
 折角ナイトのようにお姫さまを救出したのはよいが、女の子を置いてくるなんてと馨の機嫌をそこねてしまったのは言うまでもなくて……。






「あの時の光の顔、馨に見せてやりたかったなぁ」
「なんていうか、的外れなんだよねー。光も」
 普通あそこでキスの一つでもするもんじゃないかと馨は思う。そうなれば一気に関係が深まっただろうにと……。
「両想いなの解ってるなら、馨から告白すれば?」
「やだっ。僕は光に自主的に告白してもらいたいのっ」

「ふーん、ホント面倒だねー」
 そう言って笑った彼女に馨は恥ずかしそうに視線を逸らすのだった。

 続く。




続いて良いですか?いやむしろ続けさせてください。
是非二人には結ばれてもらわないと!!!





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