DEEP SPACE 2




 一日のシフトを終え、疲れきった身体を休めようとアキラが自室に戻ってみれば不法侵入者。それもアキラが苦手とする進藤ヒカル。
 何故彼が自分のベッドで休んでいるのか、ベッドから引き摺り下ろしてその真意を問い質したいところであったがアキラは深呼吸して衝動を抑える。
 前髪だけ金色にした彼と仕事で一緒になるのはごく当たり前の事だったがどうして自室で彼を見なければならないのか理解に苦しむ。
 だから自分は彼が苦手なのかもしれないとアキラは安らかな寝息を立てているヒカルを見つめ続けた。
 彼がこの宇宙船に配属されたのは自分とほぼ同時期のはずだとアキラは記憶を辿る。
 通信仕官として乗船した彼は、どんな言語にも精通していて、翻訳機でも訳せない異星人との会話もこなすという噂の持ち主だった。
 目に見えない存在とでも会話出来ると、まことしやかに囁かれているが真実なのかどうか定かではない。
 唯一間違いないのは、その進藤ヒカルがアキラのベッドで惰眠を貪っているということで……。
 アキラの凝視する視線に違和感を感じたのか、ヒカルが目を覚ます。
「お疲れ〜、あっベッド借りてるから〜」
 のほほんとした口調なのは眠気が完全に覚めていないからだろう。しかし態々起こす手間が省けたとアキラは胸を撫で下ろす。
 しかし、ヒカルは笑顔でアキラを迎えたものの、その瞳は再び閉じられていく。
「進藤!」
 アキラの声にやっと覚醒したらしいヒカルは申し訳なさそうにアキラを見上げる。
「わりい、お前の事待ってたら、つい寝ちゃったみたい」

 どうやって部屋に入ったのかはしらないが、『つい寝てしまう』のは勘弁してほしい。そんな苛立つアキラにヒカルは無頓着で…。
「だってさ、お前の部屋居心地良いんだよ」
 果てしなく広がる宇宙、流れる星に視線をやったヒカルの表情にアキラは息を呑む。

 それってどういう事なんだろうか?
 聞けない疑問がアキラの内に生まれた瞬間だった。




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