BIRTH 2




 『実は俺達付き合っています』
 そんなカミングアウトは出来ないけれど、俺『進藤ヒカル』と『塔矢アキラ』は今年の北斗杯の後ぐらいから友人以上の気持ちで付き合っていた。
 お互いの行き来が多くなり、そして意識するようになって、恋愛感情だと気が付いたのは夏の頃。
 塔矢アキラが俺に『恋人と思いたい』と告げたのが俺の誕生日で、そこからはライバルの友人じゃなくって『恋人』として付き合っている。
 東京では先日から急に真冬日になって、この間の雪の日に初めて手を繋いだ。
 塔矢の奴、『転ぶといけないから』なんて綺麗な笑みで俺に手を差し出しきて、俺が躊躇いながらも手を出すと、あいつ、恋人同士がするように指を絡めるような握り方をしてきたんだ。
 別に指が性感帯でもないんだけど、塔矢が手の甲をさわさわと撫でるもんだから、恥ずかしくなって振りほどいて逃げてしまった。
 このくらいの事で恥ずかしがるなって、どこかからお叱りの声が聞こえそうだけど、実は俺、近頃の塔矢が恐いんだ。
 男の目っていうのかな? うまく説明なんか出来ないんだけれど、時々憂いを秘めたような熱っぽい視線で全身を舐めるように見られて、でもちょっとだけ興奮しちまう俺だったりする。
 そんなこんなで、明日は塔矢の誕生日。
 あの視線で見つめられると恐くなるけれど、それでも恋人同士が誕生日を祝うのは当たり前だからと、俺は塔矢に何が欲しいのか聞いてみる事にしたんだ。
 ちなみに収入の点では何でも買ってやれるし、懐だって暖かい。
 意気揚揚と、
「なぁ塔矢、明日の誕生日プレゼント何が欲しい?」
 なんて聞いた俺に、
「君。って言ったら嫌かな?」
 なんて塔矢に、ちょっと視線を外し気味に切なくなるような声音で言われてしまって断れる奴が居たら名乗りを上げてほしい。
 いつものように強引じゃなくって殊勝な感じの塔矢に俺は弱い。特に佐為と一緒にいたせいか、他人におねだりっぽくされると断れなくなるんだ。
 それに塔矢って視線以外は、男の匂いがしないし、どちらかというと綺麗な人形みたいだから、俗物的な事が想像出来なかった。
 だからつい。
「……イイぜ。折角の誕生日だしな」
 などと安請け合いをしてしまったのだ。



 ちなみにもう俺だって16だし、SEXに興味が無いわけではなかったから、普通のアダルトビデオは見た事ある。
 これは一人暮らししている和谷の家での鑑賞会の話で塔矢と付き合う前の事なんだけど、たまたま見た女の子同士のエッチってのが、なんかキスしたり触りあったりとキレイだったんだ。
 だから、塔矢とエッチっていうのも、裸で触りあってキスもたくさんして……。ぐらいにしか考えてなかった。
 それにちょっとぐらい入れる事になっても、AVのあおり文句では『後ろの方が気持ちイイのv』なんて書いているのもあったし、塔矢の身体から推測してそんなデカイモノを持ってなさそうだから、まぁ大丈夫だろうと安易な根拠のない安心感があった。
 それにまだ手しか繋いだ事も無かったし、そろそろかな? って考えてた矢先の塔矢の言葉だったんで、『とうとう俺達も裸の付き合いってやつ?』なんて、呑気も呑気、超呑気な思考回路が動いていたらしい。
 この時あの全身を撫で回すように見る視線を思い出していたなら! もちろん後悔というのは後からするもので、先に出来るものでは無かったのだ……。


 で、当日。
 もちろん今の俺は後悔の真っ最中。都合よく塔矢の両親は留守だったので、昼間からお邪魔した塔矢の部屋。
「もう、待てないんだ」
 そう甘く囁いた塔矢の後にはキチンと布団が広げられていた。
 そして覚悟完了の俺が頷くと同時に、塔矢が服を脱ぎ捨てていく。
「進藤も脱いで……」
 僕だけ脱いでると恥ずかしいじゃないか……。と前も隠さずに頬を染めた塔矢を見た瞬間、俺は『しまったーーー』と後悔したのだ。
 そんなに身体もでっかくないのに、塔矢のモノが通常サイズでこれかよーー? と俺は心の中での絶叫すると同時に、昔の競馬もののアニメのEDが頭の中に流れてきた。
 白い出来損ないの馬が、鼠の調教師とともにその才能を開花させていくんだよなぁ、って現実逃避している場合じゃないぞ、俺っ!
 膨張率を考えるとアレがアレぐらいになって……、そう考えると、とてもじゃないが入れるのはゴメンしたい。
 後退りしながらも、視線がソレから外せないでいると、
「そんなに見つめると恥ずかしいよ、進藤」
 と塔矢が言い、みるみるソコが大きくなっていく……。
『かっ神様!!』
 デカイ、デカすぎるよっ、塔矢!!
「ねぇ、脱いでよ」
 にっこりと綺麗な笑みに、まるで命令されたロボットのように俺は一枚一枚と脱いでしまっていた。
 抱き締められて塔矢のモノが俺の下腹部に押しつけられて、俺はやっと意識を取り戻す。
「あっ、あの塔矢?」
「何、進藤? 照れてるの? ふふ、僕だって恥ずかしいよ」
 そんなイチモツで恥ずかしいとはこれいかに!
 じゃない、おおお押し倒される〜〜。
「君がプレゼントだなんて、本当に嬉しいよ。もう僕、我慢できなくてイっちゃいそうだよ」
 ふと顔を見ると、塔矢の顔が男の顔そのもので。それになんか息も荒くない……?
 塔矢の手が俺の普通レベルのソレを揉み拉くとやばい事に思考回路が回路じゃなくなっていく。
 あぁ、もう! そんな綺麗な顔でこんな下品な事すんなよーーー!!
 俺の塔矢アキラのイメージが、あっあっああああぁぁ〜。



「ごちそうさま、進藤。とってもイイ具合だったよ」
 こいつって見かけと違って本当はかなりの鬼畜野郎じゃないだろうか……。すっきりとした、元のお上品な顔をみながら俺は、後悔の嵐の中に身を晒していた。
 ついでにちょっと気持ちも良かったけれど、かなーりお尻が痛い。あんなに、あんなにまでする事ないじゃんかよ!
 そういや、誕生日おめでとうって言ってないけど、良いよな? こんなケダモノに言わなくてもさ。
 そして俺は塔矢の言葉を完全無視して、体力温存のためにスリープモードに入ったのだった。


 こうして塔矢の誕生日は俺にとって、後悔先に立たずって諺をまざまざと実感する事になった、思い出したくもない初体験の日となったのだった。





ヒカルの誕生日小説とは対照的に下品ですね……。アキラさんの誕生日、御祝儀って事で失礼をばいたしました〜。



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