冒頭に山場をチラ見せってのはよく使う技法ですが。原作未読の人はどんな感触なんでしょう。友人は絵が良いねと電話くれたんですが。
来週はもう鴆くんが出てくるということで楽しみすぎます。
以下折りたたんでSSです。丁度107幕あたりで書いて止まってものなんですが・・・
人間の姿での修業。それは過酷を極めリクオの身体を限界まで痛め付けた。
自己治癒力が高いのかどれも致命傷にはならないものの気が気でない鴆である。
手足の治療は終えたが、他にも怪我をしているかもしれないからとすっかり治療を終えた気分になっていたであろうリクオに詰め寄ったのである。
「まだ終わってねぇ、さぁ観念して脱ぎな」
「やだ。鴆くん目付きがいやらしいんだもん」
即答である。だがそれにくじける鴆ではない。
「見たところ大した怪我はねぇが着物の下に隠れているかもしれねぇだろーが!」
「大丈夫だって。そんなに痛くないんだし…、それに恥ずかしいよ」
頬を赤らめ顔を伏せるリクオに鴆も脱力する。
「あのなぁ……、オレは医者としてしかリクオを見てねぇよ」
断言すれば途端にリクオの表情が曇る。
「なーんだ、つまんないの。折角二人っきりなのにな」
その前に修業中ではあったが二人きりになど今までの数える程しかなく、この機会を逃せば次はいつ二人きりになれるか判らない。
一線を越えようとは思わないが、キスぐらいしたいではないか。
そんなリクオの心中に、鴆も我慢の限界を感じてしまう。
「男を挑発すんのもいい加減にしとけ!痛い目みてもしらねぇぞ」
鴆とてこの機会をと考えない訳ではない。治療するにしても己の煩悩と戦っている。
なのにリクオとくれば…。小悪魔とはこの事か。
「鴆くんなら優しくしてくれるでしょ?」
愛らしく小首を傾げられれば鴆は深いため息を吐くしかなく……。
「ったく困ったお人だぜ」
確かに折角の二人きりなのだ。
ほんの少し互いの気持ちに素直になっても罰は当たるまい。
「リクオ……」
「鴆くん……」
二人の唇が触れようとしたまさにその瞬間、
「ちょっと待ったーー!!」
まるでどこかの告白番組(古い)のように牛鬼が飛び込んでくる。
「牛鬼?」
「最初の盃の相手だからとリクオを任せたが、リクオの最初の相手とまでは認めん!!」
認めんぞーっっと叫んでいる途中で、
「お邪魔しました、ささっ御遠慮なさらず」
背中に羽、鷲鼻で怖面の天狗達が牛鬼を羽交い締めにして連れていく。
「……監視されてるみたい」
「そうみたいだな」
ほんの少し名残惜しいが衆人監視の中で愛を囁く趣味などなくどちらともなく距離を置く。
「……あのさ、全部片付いてボクが三代目になったら」
「あぁそんときゃどんな邪魔が入ってこようがやめねぇからな」
と言ってもきっと邪魔が入るに違いないので、今から大量に眠り薬でも作っておくかと算段する鴆なのであった。
奴良組が集団睡魔に襲われたのはその数ヶ月後であったとか……。