鴆くん、お誕生日おめでとう!!!きみには若をあげます!!!一生可愛がってください!!!
「鴆くんお誕生日おめでとう、何か欲しいものある?」
お酒はダメだよと、意外にも真面目な昼のリクオが鴆に問う。ちなみに酒は飲みすぎて体調を崩して以来、禁酒となっている。
「そうだなぁ・・・」
妖怪に誕生日など愚問ではなかろうかと思いつつ、リクオに聞かれたのが二ヶ月前の6月12日で、今月や来月では早すぎるからと単純に二ヶ月先を口にした。
ちなみに半年も先だと生きているかどうか解らないからの2ヶ月先だ。
そしてもう今日は8月12日。やっと京から帰ってきたばかりで何も用意できなかったと落ち込むリクオに鴆は表情を柔らかくしていた。
「リクオの晴れ姿を見れりゃあそれで充分よ」
何しろリクオが三代目を襲名するのだ。吉日を選んでの襲名式だが鴆はそれが楽しみでならなかった。
しかし、鴆の言葉にリクオは恥ずかしそうに俯いたのだ。
「晴れ姿って…。ボクの花嫁姿ってこと?」
たしかに娘であれば晴れ姿ではあるが。いったいどこからの知識だろうか。
「いや、あのなリクオ」
「皆まで言わなくても解るよ、ボク鴆くんのために可愛い花嫁さんになるからね」
ご機嫌なリクオに訂正も出来ず去り行く姿を見つめる鴆である。
「襲名式って……。まさか祝言とか? そんなはずねぇか」
リクオの奴なんか悪いモンでも食ったのかと心配する鴆であったが、この時は、8月吉日に三々九度の盃を交わすとは夢にも思わなかったのであった。