誘惑の甘い罠 3



 パニックのまま刹那を見ているとボタンを外す手がとまり、俯いたまま呟く。
「しかし、脱ぐのはやはり恥ずかしいものがある」
 お前はどうなんだとばかりにチラリとこちらを窺って目を伏せる刹那。
 男同士だから裸なんて恥ずかしくはないが寝ていて素肌に触れてしまうかと思うと気持ちが悪い。
 真っ裸で寝るなんて、俺は脱がないとしても隣に男の裸体は厳しいものがあった。
 意を決したかのように刹那がさらにボタンを外し始めたので俺は慌てて制止しようと手を伸ばす。
「待て待て!裸になんのは刹那が18になってからだ。それまではキスだけだ!」
 宣言した俺に、何故かホッとしたような刹那の顔。
 18になる頃にはさすがに男同士で子作りが無理だという事実に気付くだろう。
 咄嗟の逃げだったがなかなかのアイデアだった。
 理由はまだ刹那が子供だからという期限付きのものだったが、少なくともこれで身の安全は計れるだろう。そんな俺に刹那の止めの一言。
「しかしどうして裸だと子供が出来るんだろう?」
 眉を寄せて答えを求める刹那に身体から力が一気に抜ける。
 あのくそ医者め、何にも解決になっちゃいねぇ!いや状況は悪くなっている。
「あぁ、まぁなんていうか。裸でも恥ずかしくないぐらい仲良くなれば赤ちゃんも安心して生まれるんだろ」
 くっ苦しい…。
 今時16の少年にする説明じゃねぇよ。
 情けなさにまさにorzな状態な俺だったが、刹那が可哀想なほど落胆してみせたのである。
「そうか、俺のせいなのか」
 恥ずかしがって脱げなかった自分を責めているらしい。
 ここで羞恥心をかなぐり捨てられても困るので慌ててフォローをするのも忘れない。
「いや、それに刹那は若いからな」
 子供のとこに子供は出来ないんだぜ、なんてしどろもどろの言い訳をしてなんとか刹那を納得させたのだった。
 一仕事終えた気分の俺はベッドに横たわり目を瞑る。が、まだ安息には程遠かった。
「今夜はキスしないのか? 子供が安心して生まれてこられるように、俺はロックオンともっと親しくなりたい」
 やはりそうきましたか。
 なんかもう色々と薮蛇だった。脱力感いや虚無感にすら襲われる。
 最近、セックスどころかキスするのが男の刹那だけなんて男としてどうだろう。考え事をしながら刹那の柔らかい唇に軽く自分のそれを押し当てた。
 しかし、初めはいつもどおり合わせるだけのつもりがいつの間にか刹那の下唇を甘噛みしてしまっていたのだ。
 少しの抵抗が楽しくて角度を変えてその柔らかさを味わう。そしていつしか俺は刹那の咥内に舌を侵入させていた。
 刹那の身体から力が抜けて気が付く。
「だっ大丈夫か!」
 頬を赤く染めてコクリと頷いた刹那。
「…すごく気持ちが良かった」
「だろっ?俺のテク」
 大抵の女はこれで墜ちる。って刹那を落としてどうするよ?
 刹那がもぞりと足を擦り合わせていて俺は青ざめた。まさか今ので勃っちまったとか?

  刹那の赤みを帯びた瞳が怪しく光る。 この時の俺は肉食動物に狙われた草食動物の気分そのものだった。


  どうなる?俺!








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