降伏勧告
いつの間にかこの男を好きになっていた。 今までのやり取りを断片的に思い出しても決定的なものは何もなかったはずだ。 身体を一つにしたいと思えるほどの何かを、理由として探すのは無意味かもしれない。刹那自身の奥深くでこの男を求めている。 「ロックオン…」 裸の彼にすがり付くと、大の大人が情けない事におずおずと抱きしめてくる。 「刹那、お前無理してるんじゃないか?」 ただの背伸びじゃないか? 大人になりたくて、からかわれるのが腹だしくて。手っ取り早くセックスして、大人になるために利用されるのは切ないと説明するロックオンに刹那は首を振った。 そんな矜持は持ち合わせていない。それよりも心に芽生えつつある感覚を信じたかったのだ。 今更ながらに躊躇するロックオンの態度の方が癪に障る。 「その割りには準備万端じゃないか」 裸でバスルームへ入ってきたのはそれなりの覚悟だろう。あとはこのままベッドへなだれ込むだけだ。 「あぁ? これはまだ半勃ちだし、まだまだこれから…」 準備万端の意味を違えたロックオンの言葉に視線を下にした刹那が表情を固くする。 身長差や体格差からもある程度想定していた刹那がそのサイズに怖じ気づくのも無理はない。 「……デカイ」 「刹那もこれで気持ち良くしてやるよ」 刹那が本気だと知ったロックオンにもう遠慮はない。キスからか? それともボディタッチからか? と不埒な動きを見せる手。 だがそこに落とし穴が待っていた。 「も? 複数……、なんだな」 ロックオンの言葉に、一瞬にして今までの自分の行動を後悔した刹那である。 「離せっ」 この体勢から相手を一撃するのは容易で、もう一度膝でも蹴ってやろうとしたのだが、今度はロックオンに阻まれた。 蹴ろうとした足を掴まれるとは思わず刹那はロックオンを睨み付ける。 「勘弁してくれよ。結構痛かったんだぞ」 猫が威嚇するような刹那を宥めようと友好的に手を差し伸べるロックオンだったが、 「この眺め。いいもんだな」 と、にやけた顔をさらすではないか。 倒れた自分が抱き起こされた状態から蹴ろうとした足を持たれ、隠す事なくロックオンに見られてしまっている。それを自覚した刹那は珍しく動揺していた。 半勃ちだった『彼』はすでに凶器の域で……。 「黙れ変態」 たとえ片足を持たれていようと、刹那にはなんらマイナス要素ではなく、自由になる足を思いっきり高く上げてロックオンの脳天に振り下ろす。 その行動は僅か2秒。ためらいなど一切無い攻撃に今度はロックオンが気を失う番だった。 こんな二人が本当の意味で結ばれるまでにもう少し時間が必要なのであった……。 お付き合いくださりありがとうございました。とりあえずこの辺りで。しかし文字通り習作ですorz まだまだ世界観や個人の背景など未出の部分も多く補完するには実力不足でした。自分的も萌えには程遠く、このジャンルの難しさを痛感した次第です。とりあえず書き終えてすっきりしました。最後になりましたが読んでくださってありがとうございました。 |