心の氷
こんな場面は何度も繰り返してきた。 だから慣れているはずなのに、悲しそうにこちらを見つめるロックオンに居心地が悪かった。 「あいつと刹那の間に何があるって言うんだ?」 「それを聞いてどうする。昔の男だと気付いているんだろう?」 そうだ。アリーは昔の男だ。だが恋人ではなく、単なる身体の関係があるというだけの間柄だった。 なのに、ロックオンがあまりにもしつこいので俺は苛立たしげに溜め息を吐く。そんな態度が余計にロックオンを追い詰めたのだろう。 「まさか、そいつと俺を比べるのか?」 「比べるまでもない」 そう。お前とあいつらは違う。 見返りを期待して男に身体を開いてはきたが、お前は違うんだロックオン。 だがロックオンはますます不機嫌になっていく。 大人のくせにこんな子供に振り回されるなんて格好が悪すぎるんじゃないか? 黙りこんだ俺に何か誤解したのだろう。 「過去の男を引きずるな!」 謂れのない激昂。売り言葉に買い言葉だった。 「バカか? 過去を気にしてるのはそっちじゃないか。お前も俺を手に入れた気になるな」 「刹那っ!」 振り下ろされた手が頬を叩く。 「……」 「刹那、お前には俺の気持ちが届かないのか?」 バカな男だ。こんなガキに振り回されて。 誰もが口を揃えて言う。『お前は魔物だ』と。 身体の上で腰を振る男達。欲望を人のせいにして、自分は悪くないと言い張るのだ。 ロックオン、お前もその一人なのか? それとも……? 「……抱きたければ抱けばいいさ」 誰もが上っ面の言葉で、明日になれば忘れるのに愛しているなんて囁く。 期待しても裏切られるから期待なんてしていないつもりだったのに。 ロックオン、お前の真剣な態度は俺の心の氷を溶かしてしまいそうだ……。 お互い一方通行な両想いなのです |