君に夢中なのは俺だけではない




 デュナメスのコックピット内で、ロックオンはハロに指示を出しながら微調整をする。
 このメンテナンスが後々に生きてくるので手は抜けない。そこにあるのはほんの少しの狂いさえも許されない世界だ。
 どれぐらい時間が経っただろう。今まで作業に集中していたので聞こえていても意識の外であったが、急に外の音が鮮明に聞こえたのだ。
 それは恋人の刹那の声だから聞こえたのであろう。
 おまけに何か雲行きの怪しい雰囲気である。

「イアン、くすぐったい」
「我慢しろ、悪いようにはしない」

 刹那とイアンの声だ。

「結構いい身体になってきたじゃないか」
「やめろ」
 いやらしく嘗め回すようなイアンの声と苛立ちの混ざった刹那の声。
「大人しくしてろ。エクシアに乗りたいんだろう」
「エクシア……。解った、我慢するから早くしてくれ。それと、ロックオンには秘密にしておいてくれ」

 なんだ、この会話は…。

「あぁ、ほら見ろ。こんなに大きくなった」

 可笑しそうに感嘆を洩らすイアン。
 刹那も刹那だ。ロックオンには秘密にしておいてくれだって!?
 まさか。うっ、浮気現場か?
 くそっ刹那の奴、俺の知らないとこで男を咥えこんでるなんて!
 信じられないが現実は無慈悲だ。
 イアンのおっさんもいい年して、エクシアを盾にとって刹那をいいようにしようとは許せない。
 刹那のどこが大きくなったんだ!


『あっ、ぁ、や。イ、アンそこ、は』
『ここがいいんだろう?刹那。ロックオンのような若造にはないテクだからな』
『ダメ、だ。あっ、』
『ほら足をもっと広げな。エクシアに乗りたいならな』
『やっ、っんふっ、助け…て、ロックオン』
『ふん、こんなに大きくしといて今更だぞ』

 イアンに貫かれながら大きな瞳から涙を流す刹那が浮かぶ。

 俺の刹那にあのおっさん!!
「ハロ!早くハッチをあけろ!」

 デュナメスから慌てて飛び出ると、そこにはパイロットスーツを半分脱がされた刹那がいて…。

「よくも俺の刹那に!」
 そう言ってなぐりかかろうとしたらハロの兄弟達に阻まれた。
「馬鹿もん!お前じゃあるまいし。ただの測定だ」
 なるほどよく見れば、刹那は電子測定の最中だ。これは身体の細部まで狂いなく測定出来るのでガンダムの設計には無くてはならないものであり自分も経験した事がある。
 つまり成長期の刹那は2ヶ月でサイズも変わので定期的に測定し直しているらしい。
 大きくなったというのは身長であり。 俺に秘密というのはまだまだ足りない身長の事でからかわれたくなかったかららしい。

「いやー、刹那が浮気してるかと思ったぜ」
 はっはっはっと笑って誤魔化せば、刹那の冷たい視線が投げかけられる。
「俺をそんな尻軽と思ってたとはな」
 くるりと背を向けて立ち去ろうとする刹那。
「ちょっ、刹那待てって!」
 慌てて追いかけて、棚の影へと刹那を連れ込む。久しぶりに会えた恋人に余計な誤解を残したままには出来なくて、俺がどれだけ刹那を愛しているか態度で示す。
 勿論、刹那とてほんの少し拗ねてただけで、俺の抱擁にぎこちなく応えてくれた。

 それだけ夢中なんだよと囁けば刹那も黙って目を閉じて……。




 あのガキども、物陰で解らないと思ってるのか?
 湿った息づかいが響いてくる。けっこう濃厚じゃないかと嘆きつつ、CBは守秘義務にくわえ職場恋愛禁止にすべきだと、濡れ場が繰り広げられそうなその場を立ち去るイアンなのであった。







拍手お礼SSより。バカップル…?



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